建売や中古戸建ての購入を検討する際に必ず考えなければならない資金計画ですが、昨今では諸費用も含めた住宅ローンの借入れが可能となっていることから、より気軽に・・・と言っては変ですが、物件が購入しやすくなっています。
しかし、頭金0円=フルローンを組めるから言っても現金を一円も用意する必要がないということではありません。今回は、頭金0円で住宅ローンを組むつもりの方に向けて、実務でよくあるお客様の勘違いや頭金0円ローンのデメリットについてお話します。
頭金0円住宅ローンの仕組み
まず住宅ローンの仕組みについておさらいです。家を購入して実際に住むためには、物件の本体価格を支払うことはもちろんのこと、その他に火災保険料やローン保証料、所有権を移転するための登記費用など各種手続きに掛かる諸費用もあります。
そして、昨今の住宅ローンでは、上記図のような物件本体価格に加え、諸費用分について掛かる費用も借り入れができるので手出しのお金をほとんど出すことなく家を購入することができます。ちなみに上記カテゴリの詳細を図にすると以下のような形となります。
詳細 | |
物件本体価格 | 建物価格・土地価格 |
諸費用 | ローン保証料・融資事務手数料・登記費用・火災保険料・仲介手数料・印紙税 |
後々掛かる費用 | 不動産取得税・固定資産税・都市計画税 |
本来、住宅ローンというものは不動産を購入するための目的を持ち、ローンの対象となるのは建物・土地の価格部分だけです。しかし、現在では諸費用分についても各金融機関で諸費用に対応したローン商品を提供しているので物件価格+諸費用をローンでカバーすることができるようになっています。
ただし、後々掛かる費用については例えば不動産取得税であるとおおむね半年後に請求が来るので諸費用に組み込むことはできません。
手付け金はローンで対応できないので現金が必要
上記のお話では物件価格+諸費用で住宅ローンを組むことができるという説明をしているので、一見すると自己資金0・・・つまり現金を全く必要しないで家が買えると思われるかもしれません。しかし、不動産の購入をするにあたって現金を売主に渡す場面があります。それが手付金です。
手付金とは、不動産の購入を決断(契約)する上で売主に渡すいわば約束金のようなもので、不動産保証協会によると以下の記述があります。
手付金とは売買契約が結ばれた際に相手方の債務不履行の有無を問わず解約権を認める目的の為、あるいは相手方に債務不履行があった場合には損害賠償もしくは違約金として買主から売主に対して支払われる金銭です。手付金を支払っても売買代金の一部を支払ったことにはなりませんが、契約時に「手付金は、残代金支払時に売買代金の一部に充当する」などと定められて売買代金の一部に充当されることが一般的です。
不動産保証協会:手付金とは
つまり、売買契約の段階で物件価格の一部を手付金として売主に渡す必要があるのです。ちなみに渡す金額については物件価格の5~10%であることが多く、例えば3000万の物件であれば契約時に150~300万の現金を売主に渡すことになるため、完全に自己資金0で物件が買えるとは言えないです。(契約ができない)
手付け金と住宅ローンの関係
自己資金0・頭金0円で住宅ローンが組めるのに現金が必要になる・・・ちょっと頭が混乱をしてしまうかもしれませんが、これは契約からローンが実行されるスケジュールを知ると納得がいくと思います。それが上記の図です。
そうなんです。手付金は売買契約時に売主に渡す。しかし、実際にローンの実行がされるのは決済時です。つまり、手付金については支払いがローン実行よりも先に来てしまうのです。
そのため、自己資金0で家が買えるというのは半分間違いで契約時に渡す手付金をまず用意できないと契約自体ができないので現金の準備は必要ということになります。
ちなみに手付金として払った金額は、大半のケースで物件価格に充当されることになります。そして、手付金も含めたフルローンで住宅ローンを組んだ場合は決済時に手付金で払った額が手元に戻るようなやり方も実務上では行われています。
手付金が払えない時の対処法
実務上でお客様と接していると、手付金を用意することができず購入を断念してしまった・・・ということが稀にあります。
しかし、手付金についてはあくまで売主との交渉によって決めるので用意ができない場合はここで挙げる方法を不動産会社に提案してみるのも一つの手と言えます。
減額の交渉を行う
手付金の性質は詳細を知ると奥が深いのですが、実務上では安易に購入意思を示したり、安易な解約をしてほしくないという意味合いから来ています。
特に不動産は高額な取引となるため一度購入意思を示すと多くの関係者が取引成立に向けて動くことになるので、手付金は売主にとっても万が一に備えた取引上外せない要素と言えます。
ただし、手付金については法律で上限は決められていますが下限は決められていないので交渉による減額が可能な場合があります。ポイントになるのは購入の本気度と属性面です。
属性とは住宅ローンの融資が通るという信用面のことで、例えばローン審査に有利に働きやすい職業、年収から物件を購入するに相応しい人かなど銀行から見られる各人のステータスのようなもの。
・・・簡単に言うと、キャンセルの可能性がなく、ローン審査も通過できると売主に判断されれば手付金を減額しても契約をしてくれる可能性がでてきます。何がアピールポイントになるのか仲介の担当者に確認をしてみましょう。
手付金分を借りる・贈与を受ける
親族で住宅購入のためにお金を貸してくれる・贈与してくれる人がいる場合は頼るのも一つの手です。1年間に贈与を受けた財産の合計額が110万までなら贈与がかかることもなく(2022年10月時点)、その他にも最大1000万まで非課税で贈与を受けられる住宅取得資金の贈与など政府の後押し支援策なども執筆時ではあります。
手付金の安い物件を探す
その地域に根付いている不動産会社であれば、建売業者の提示する手付金がいくらくらいなどある程度目星をつけることができます。もし購入時に手付金の用意が難しいと感じるのであれば、予め手付金額について出せる額を仲介担当者に話しておくと良いかもしれません。筆者のケースで言えば、某建売業者との取引で手付金50万(物件価格の1%)にて契約をした経験もあるので、そうした業者の提案がされる可能性も僅かですがあるでしょう。
フルローンのメリット・デメリット
現在では各金融機関で様々な住宅ローンが提供されていることにより、頭金を必要としなくてもローンを組むことが可能です。しかしながら、こうした頭金0円ローンにはその性質に応じてメリット・デメリットがあることも知っておきましょう。
メリット部分で言えば、手出しの現金支出を減らせることから生活費として財産を残しておける、住宅ローン控除の金額が大きくなるなどが挙げられます。
デメリットについては、返済金額が頭金有に比べ大きくなることから返済の負担が大きくなる、住宅売却時に残債が残る可能性が高くなるなど正にメリットデメリットは表裏一体です。
また、これは以外と知られていないのですが、フルローンのデメリットは頭金有よりもローン審査が厳しくなりほぼ確実に金利が高くなる点も挙げられます。
関連リンク:銀行と不動産屋が教えない住宅ローン頭金の重要性
私自身の考えとしては、頭金は入れられるなら入れるにこしたことはないですが、現在は比較的低金利の時代が続いていることもあって、フルローンが一概おすすめできないという訳でもありません。この点は是非ご家族で話し合われて決めましょう。
ちなみに埼玉県内の新築建売物件であれば、筆者で仲介手数料最大無料サービスを考えております。気になる物件がありましたら是非ご相談ください。