住宅を購入時にほぼ大半の方が利用する住宅ローンですが、正直何から手をつけていいかわからないという方も多いのではないでしょうか。
結論から言いますと、住宅ローン選びではじめに考えるべきことは銀行の特性+自分の属性を知ることです!
よくネット上では審査が通らない・・・などの意見を見かけることがありますが、多くのケースでは自分の属性を知らずに審査を申し込んでしまったがために当然の結果で審査落ちとなっていることが多いのです。
本記事では、不動産屋のいいなりになるのも癪だし・・・ある程度の知識は知っておきたい、大変な審査を何度もやらず効率良く自分に合った金利を提示をしてくれる銀行を探したい!という方の向けの記事です。
銀行によって審査の通りやすさは違う
インターネットを見ると、各金融機関の金利などを比較できて今は便利な時代になりましたが、住宅ローンは同じ金融機関でも実際に提示される金利は個々で異なるため一概に比較をすることが難しい部分も現状としてあります。
特に最近は、実務において接するお客様からauじぶん銀行など他行よりも金利が低いネットバンクで審査を出したい等と言われることも多くなりましたが、大切なのはそもそもあなたが最優遇の金利でそのローンに通るのか?という面です。
今は何事も平等を謳う世の中に変わりつつありますが、残念ながら住宅ローンの世界では明確に個々が区別されている状況のため、金利の低い銀行ほど審査が厳しくローンに通りづらい、金利上乗せされやすい状況にあると言えるのです。
そして、やっかいなことにネットで記載されている金利が低くても、後述する属性によって自分で審査に出したら他の銀行の方が金利が低かったなんてことも普通にあります。
ちなみに各金融機関の審査の通りやすさについては主に下記の形で分けられます。
審査の通りやすさ | 金融機関 | 銀行カテゴリ | 金利 |
最難関 | auじぶん銀行
ソニー銀行 PayPay銀行 SBIネット銀行 |
ネットバンク | 変動0.289~ |
難関 | 三菱UFJ
りそな銀行 みずほ銀行 三井住友 |
都市銀行
(メガバンク) |
変動0.375~ |
中 | 中央ろうきん
大東銀行 横浜銀行 さいしん JAいるまの |
労働金庫・地銀・信用金庫・農協 | 変動0.415~ |
易 | ARUHI
ファミリーライフ |
フラット35 | 固定金利0.92~ |
ネット系がなぜ低いかは、後述するそれぞれの特性でおわかりになると思います。
ちなみに住宅ローンを選ぶ上で、固定金利と変動金利どちらがいいのか悩む方は結構多いと思いますが、審査の通りやすさで言うと固定の方が通りやすい傾向にあります。
ネット銀行の特徴
メリット | 金利が低い
保証料無料が多い 24時間ネット手続きができる所多し |
デメリット | 審査が厳しい
窓口がないため対面サポートがやや不便 不動産屋が介入しづらい 事務手数料が高い傾向 属性が悪いと他行より金利が高くなることも有 |
ネット銀行最大の魅力は何より最優遇金利を取れた場合に最も金利が安くなる可能性があるという部分ですが、そのぶん審査は本当に厳しく大手企業勤めや公務員など一部の方しか条件の良い金利を引き出せないばかりか審査も通らないという方も多数です。
なぜ、こうした仕組みなのかというとコストの削減と貸し倒れリスク軽減によって実現されていると考えられます。
ネット銀行は実店舗を持たないため、窓口対応可能な銀行と比べコスト面を圧縮しています。また、住宅ローンは今後何年も続いていくので、中にはローン破綻をしてしまう人も残念ながら出てきてしまうわけですが・・・そうしたことが起こると銀行側も抵当権の発動などの追加対応に追われ余計なコストになります。
そうした部分を極力防ぐために・・・簡単に言うと効率性を重視した方針となっているため金利が低く設定できるのです。ちなみにネット銀行の場合、審査もほとんどがAIによって行われています。
ただ、窓口がないという部分は細かなサポートを受けづらく、更に実務的なことを言いますと仲介している不動産会社もネット銀行と直接のやり取りができないので細かなアドバイスをできないケースがあります。
決済までのローンの進行は自分自身で管理する必要があるため、確実にしっかりと進めていきたい場合は窓口のある銀行の方がおすすめできます。
都市銀行の特徴
メリット | 金利が低い
経営が安定している 事前審査の回答が早い 対面相談のできるローンセンターがある |
デメリット | 審査が厳しい
審査金利が高く借入額を伸ばしづらい |
りそな銀行やみずほ銀行などの全国に展開するメガバンクは、安定した財務体質から低金利の貸出しを実現しています。また、経営が安定していることは35年と長期で組むことを基本とする住宅ローンにとって安心できる要素と言えるかもしれませんね。
また、メガバンクで審査を行う場合は審査の基準こそ他行と比べ難しいものの、対面での窓口があることに加えローンの担当者が付くことも多いのでわからない点などは気軽に相談できる点も魅力です。
後述する属性の良い方であれば、メガバンクで審査を出して銀行、不動産仲介会社の担当者と一緒にローンの準備を進めるのが最もスムーズかつ確実にローンの実行を迎える方法と言えるかもしれません。
ただし、細かいデメリットになるうるものとしてはメガバンクは総じて審査金利が高めに設定されており、思いのほか借入額を伸ばせないことがあります。これは具体的に言うと、フルローンを考えている人にとっては年収が高くても希望の借入額を借りれない(減額融資)の可能性があるのです。
地銀・信金・労金系の特徴
メリット | 柔軟な対応でローン組みしやすい
審査対応が早い 借入額を伸ばしやすい 窓口対応充実 選択肢が多い |
デメリット | 金利が都市銀行に比べ高い傾向
種類が多く最適を選びづらい 保証料が高くなりやすい |
横浜銀行や武蔵野銀行など、地方銀行は地域に根付いた運営を行う銀行であり狭い範囲で他店舗展開していることが多いです。地銀は個人事業主や収入の安定しない方においても相談にのってくれることが多く、審査自体は通しやすいことが挙げられます。
また現在は、他県に本店を置く地方銀行においても審査の申込みができることが多く、選択肢の幅は実に広く融通性があると言えます。これがどういう意味かというと、例えばローンを通すのが一見難しい方でも○○地方銀行ではダメだけど、××地方銀行であれば審査基準が違うので審査が通ると言ったことがあります。
どうしても、金利の低い変動で組みたいけど自分は大丈夫かな・・・?という場合は人によりこうした地方銀行や下記の労金・信金系をいくつかあたることで審査通過の可能性が出てきます。
また、一般的に金利が高いと言われる地銀ですが、現在は多種多様な審査方法やプランによってメガバンク並みの低金利で借りれる所もあれば、団信における七大疾病保証を0.1%の金利上乗せ付加できる銀行もあるなど、個々で最適なローン組みをすることもしやすくなりました。
また、信用金庫については元々営利目的での運営ではなく地域への利益を優先とした運営となるので、条件が合う方であれば更に審査は通りやすくなる傾向にあります。
この辺は話すと長くなるので後日別記事にする予定ですが、信用金庫の場合は株主の利益優先ではなく「信用金庫法」に基づき地域住民が会員となって地域全体の繁栄を目指す名目があるのです。ただし、信用金庫の場合は条件の合う方にとってローンを組みやすい反面、「出資金」と言われる費用が発生することがあります。
また、似たような存在である労働金庫については、ご自身が「組合員」であれば自営業・危険職種など住宅ローンの審査にマイナスとなるような属性であったとしても審査に通る可能性があり、金利面に優遇が付く可能性すらあります。
数ある住宅ローンですが、地銀・労金・信金については扱う範囲が膨大であり、属性の悪い人であってもローンの通る可能性を秘めているのです。
フラット35の特徴
出典:住宅金融支援機構フラット35
メリット | 支払いが一定
ローンを組みやすい 借入れが伸ばしやすい(上限8000万) |
デメリット | 自己資金が1割以上ないと金利が上がる
変動に比べ金利が高い 適合証明が必要 |
住宅金融支援機構が金融機関と提携して行うフラット35は固定金利の住宅ローンです。固定金利は支払い額が安定することから選ばれることも多いローンですが、審査面で見ても通過しやすいと言えるものです。
しかしながら、フラット35の場合は自己資金を1割入れないと金利が上がってしまったり、購入物件において「適合証明」が必要なので、中古戸建ての中にはフラット35が利用できない物件も多々あります。
ただ、属性(人の審査)は勤続年数が短かったり、派遣社員の場合でも直近3期分の給与明細等収入を証明できるものがあれば審査を受けることができるので、自分自身の属性に対して不安があるけど家を買いたいという人に最もおすすめできる住宅ローンと言えるかもしれません。
また、フラット35の場合は団体信用生命保険への加入が任意のため、今まで健康上の理由で住宅ローンの審査に落ちてしまった方でも審査を通せる可能性があります。
属性で金融機関を判断する
今までの解説は主に借り先となる金融機関の各紹介でしたが、住宅ローンを組む上で最も大切なのはご自身の属性です。属性とは簡単に言うと、申込みをする人自身の経済力や社会的信用度を金融機関を見ているのです。内容としては主に以下の内容が挙げられます。
- 勤務先
- 勤続年数
- 職種
- 年収
- 年齢
- 健康状態
- 既存の借入額
- 滞納履歴
ローンの申込みが入ると、上記の項目を各金融機関で確認し住宅ローンを貸出すのに相応しい人であるか判断をされるわけです。ちなみに審査項目は各金融機関によって異なりA銀行では年収300万以上、B銀行では勤続年数が1年未満はNGなど・・・各社で公開はされていませんが細かい審査基準を設けています。
こうした細かい部分の違いが各金融機関であるために、個々で最も効率的な住宅ローンを選ぶのは難しいのです。
ちなみになぜ不動産会社の人間である私がこんなことを知っているのかというと住宅業界に携わっていれば各銀行の担当者が自社のローン商品を頻繁に紹介しにくるからです。
金融機関とすれば不動産会社と仲良くしておくと自社のローンを提案してもらいやすくなるわけですから、時としてネットには守秘義務の都合上書けない各銀行の情報なんかも教えてくれたりすることがあります。だから経験のある不動産業者は意外にもローンについて詳しいのです。
話しがそれましたが、そんな属性は住宅ローンを選ぶ上で非常に重要な項目であり、ここではこの中でも特に影響を受けやすい項目について解説しようと思います。
勤続年数
申込人が将来に渡って返済を続けられるのかを知る上で勤続年数は重要視されやすい項目です。具体的には勤続年数が1年未満であるとその時点で審査落ちとなってしまう銀行もあります。
年収
多くの銀行は年収に占める年間返済額の割合(返済比率)を審査で見ていまして、年収が300万円以内であると審査を通さないという銀行もあります。しかし、最近では共働きの夫婦であれば収入合算をした年収で審査に出せたり、夫婦双方に返済義務のあるペアローンなどの方法によって年収が低い方でローンを通す手段は増えてきました。
健康状態
民間金融機関の住宅ローンを組む場合は通常、団体信用生命保険(団信)の加入が必須となっており健康状態に不安のある方はこの団信に加入することができず住宅ローン審査に落ちてしまうことがあります。
団信はローン契約者が万が一、死亡や重度の高度障害に陥った時に保険会社が契約者の代わりにローンを弁済してくれる保険で金融機関はこの保険の加入がないと弁済の担保が足りず住宅ローンを貸し出せないのです。
特に過去に心筋梗塞やがんなど重度の病となる既往歴がある方は、収入や職種、年齢に全く問題がなくてもこの理由だけで審査に落ちてしまうことがあります。
こうしたケースの対応策としては、緩和型のワイド団信を取り扱う金融機関を探す、団信の加入義務がないフラット35を選択するか配偶者をローン契約者にした収入合算を行うなど個々の置かれている状況によって申込み方法を変えることです。
既存の借入額
既存の借入額とは現在返済をしているカーローンやキャッシングの金額のことです。銀行から借入れできる金額は返済比率をベースに計算をしますが、簡単に言いますとこうした既存の借入額がある場合はその現在支払っている金額を差し引いて返済比率を計算します。特に現時点で月々の返済額が多いと返済比率が全く伸びずいわゆる「0回答」となることも多いです。
対策としては既存の借入れを先に完済する、もしくは多くの銀行が借入額よりも月々の支払い額を審査項目に上げているので既存ローンの返済年数を延ばした借換えをして返済比率を上げることです。
滞納歴
キャッシングやリボ払い、携帯代などの過去の支払いで滞納履歴があると住宅ローンの審査通過は極端に難しくなります。この審査項目についてはどの銀行も重視している部分であり、審査の厳しい銀行では滞納歴があるだけで1発アウトになることもあります。
ただ、実務上ではこの部分は滞納を隠してローン審査に出す方もいれば、自分が滞納をしていることに気づかず審査を出して落ちてしまった方もいたり・・・中には自覚のない滞納をしている人もいるのです。
もし、自分の信用情報が気になる場合はCIC・JICC・KSCなどの信用情報機関から有料ですが情報開示を行ってみましょう。特にCICはクレジット系の情報、JICCは貸金業などの信用情報が記録されているのでこれらを開示することで自分に滞納歴があるか把握することができます。
まとめ
現在はインターネット上で金利や月々の返済額だけでおすすめの住宅ローンを選ぼうという風潮が出ていますが、今回解説をしたようにローンの審査項目は本当に膨大で全ての人がネットに掲載される最優遇金利を取れるわけではありません。
実務上でも、ネットで○○銀行で0.289%の金利だったのに実際に審査を出したら0.7%だったんだけど・・・どうなってるんですか?なんてことを言われたことがありますが、それはその方の属性によって金利が引き上げられている状況と言えるのです。
なので、ネットに記載されている金利が低いからと言って、それがあなたにとって最善の住宅ローンであるとは限らないわけなのです。
大切なのは自分の属性をよく理解して自分に合った銀行を見つけることです。ただ、全ての銀行の特性を覚えるのは情報が膨大で不可能ですので、様々な案件をこなしている経験ある不動産会社の人にローンの斡旋をしてもらうのが結局はアナログながら最も効率的とも言えるかもしれません。
最後にちょっとしたPRになりますが、埼玉県内の新築建売物件でしたら今後仲介手数料無料で仲介をしようと思っています。もちろん、住宅ローンに関しても私がこれまで蓄えた各銀行の情報をもとに個々のお客様に最適な提案ができるよう努める所存です!是非お気軽にご連絡ください。