貸倉庫を相続したなど、これから運用方法を考える上で多くのオーナー様は今入居しているテナントおよびこれらから募集をして入居するテナントとの間でどのようなトラブルが起きるのか?考えたことはありますでしょうか。
本記事では、そんな倉庫物件を必要とするオーナー様、テナント様が利用するにあたってよく起きるトラブル事例を話します。是非、本記事をご覧になって事前に懸念事項を払拭した上で気持ちのいい貸し借りを行いましょう。
トラブルが起きやすいタイミング
貸倉庫を運用する上で、トラブルが起きやすいタイミングは入居時と退去時です。特に現在倉庫が空きとなっていてこれから物件を貸し出す・借りるという方は以下の点を気を付けることでリスクの軽減ができます。
【入居時のトラブル】営業許可の取れる倉庫か?
倉庫と一括りにしても、実際は立地や規模、構造などによってそれぞれの倉庫で希望の業種が営業できるのかが異なります。いわゆる許認可の問題ですが、これは基本的にこれから借りるテナントがその物件で営業できるかを調べなければならない項目であり事業用物件の場合は契約前に役所に赴き調査することが大切と言えます。
ちなみに不動産会社が倉庫業に精通している業者であれば事前に必要書類の準備やアドバイスをしてくれるのでこれから初めて事業を開始されるという場合でもあまり心配はいりません。
しかし、実務上では募集をしている不動産業者が住宅をメインに扱っているところであると、そもそも用途変更や消防法など営業をする上で必要となる知識を知らないまま募集をかけてしまっている所が非常に多く、借主もロクにアドバイスを受けないまま営業を開始したら行政から指導をされてしまったなんてことが非常によく起きています。
そのため、オーナー様目線で言えば倉庫物件であれば知り合いの不動産業者よりも倉庫のノウハウに精通している不動産業者に依頼をする方が間違いなくこうしたリスクを軽減でき、テナント側も必要なアドバイスを受けつつ営業に向かえるのでおすすめができます。
認可の取れない物件でありながら内部造作を先に進めてしまうと行政から原状回復命令が出されることがあります。この認可問題は実際に裁判となることが多い項目ですので、テナント側であれば契約前に保健所や消防署、市役所など必要な所に確認を取ることが大切です。
ちなみにどんなものを持参すればいいのかわからないという方も多いですが、おおよそ下記の書類を集めることができれば事前に営業ができる物件なのか判別できます。
- 土地・建物登記簿謄本
- 公図
- 地積測量図
- 建物平面図
- 建築図面(給排水管図、平面図、立面図など)
- 建築確認通知書
- 検査済証
現況設備の状態
貸倉庫の多くは築20年以上など割と経年劣化が進んだものが市場の大半を占めているので、入居時に現時点で備わっている設備を予め納得した上で借りられるかという判断が大切です。
例えば、よくある事例とすればシャッターの建付けや床の状態などを内見で確認したにも関わらず、実際に営業してみてからやはり使い勝手が悪くアレもコレも直してほしいと要望するテナント様もおられます。
もちろん、経年劣化による損耗はオーナー様負担という考えは一般的ですがオーナー目線で見ると無限に修繕のお金を出せるわけではないので、本来はこうした部分も契約前に予め確認して要望を伝えておくことが大切です。
筆者は不動産業者身分でありながら、結局のところ人対人のお付き合いによって賃貸借契約は成り立っているものであると考えるので双方が気持ちよく使うにはお互いが事前に懸念事項を潰していったり、妥協点を確認しあうことが重要かと思っております。ちなみに倉庫物件おいてテナント様が契約前に具体的見る部分は以下となります。
- 電灯・動力の有無
- 駐車場部分の凹み
- 床の状態
- 外壁の穴等
- 現状で雨漏りはないか
- トイレや水栓の状態
- シャッターの開き具合
- 造作設備の事前見積もり
入居中に多いトラブル
長くテナント様に利用されていると必ずどこかのタイミングでトラブルは発生するものです。ここでは、入居中に良く起きるトラブルについての解説です。
雨漏り
倉庫運用最大のリスクとなる雨漏りですが、これはほとんどの物件で突然訪れます。特にテナント様側からすれば大事な商材や機械設備に雨が当たって使い物にならなくなってしまったという事例は長く倉庫に携わる不動産業者であれば誰もが一度は経験しているはずです。
これに関して言えば・・・回答になっていないのですが本当に突然訪れるため、可能であればオーナー様側は倉庫を扱う不動産会社と管理契約やサブリース契約を結んで管理業者に定期的に建物の検査を行ってもらうのがよいでしょう。
ちなみに筆者の会社でも年1度くらいの頻度で預かる物件の倉庫チェックを行っていますがそれでも100%は防げない問題です。ただ、リスクを軽減するという点で言えば例えば未だ多く存在するスレート屋根の倉庫であればカバー工法などにより新たな屋根を設置することを検討してください。
この部分に関してテナント様側では火災保険や企業財産包括保険に加入し不測の事態に備えられると理想です。雨漏りについては経年劣化から貸主の責任となることが多いのですが、費用を掛けたり修繕をしても防げない場合も稀にあるので実務上ではテナント様に火災保険・企業包括保険に加入してもらうことを特約として定め双方の金銭的な負担を少しでも減らすやり方が最も円滑に進む方法であると思っています。
風災によるシャッターの破損
シャッターは強い風が当たると剥がれて飛んでしまうことがあります。こちらも自然による脅威なので完全に防ぐことは難しいのですが、テナント様目線で言うと管理業者のいないいわゆる個人のオーナー様と直接契約をしている物件であると初動がなかなか対応してもらえず2次被害が発生しまう可能性もあります。
ただ、不動産会社の管理している物件であったとしても・・・風でシャッターが飛ぶということは他の管理物件でも同時期に飛んでしまって対応に追われているなんてこともあるので一概には言えないのですが長年やると割と高頻度で発生する問題です。
こちらについても基本的には応急処置を行った後に保険対応で直すのが一般的です。
退去時のトラブル
倉庫を貸し出す上で最もトラブルが起きやすいのは退去時の原状回復についてです。
借りた時の状態にして返すという原則のもとで退去するテナントと相談を重ねて費用負担などを決めるのですが、これが本当に揉める原因になります。
特に実務上で多いのが、業績悪化などの理由で退去されるテナントに限ってはもはや後のことなんで自分は関係ないとばかりに対応してくる方もいれば物理的に費用の捻出ができないという方も多くいらっしゃいます。
こうしたテナントであるとオーナー様側は泣き寝入りとなってしまうことが多いわけですが、難しいのが入居時にこの部分は判断ができない点です。
実務上ではまさか退去時にそんな対応するとは思えないほどいいテナント様が解約時に豹変して一切の金員を支払わない・・・そんな状況を残念ながら幾度となく見てきているので、この点についてオーナー様側で大事なことは物件の割合に応じた敷金の設定をし、そこからの値下げは絶対にしないということです。
退去時にどんなに悪態を付かれたとしても最悪相応の敷金さえ契約時に預かっておけばそこからの償却で賄うことができますからね。時にはびっくりするくらいの修羅場となるこの原状回復問題は未来に訪れる可能性があるからこそ契約時に徹底した打ち合わせが必要ということです。そのため、契約時は下記を意識しましょう。
- 造作などの規模を事前に聞いて敷金を設定
- 敷金の減額交渉には応じない
- 入居前の状態を記録に残す
関連リンク:【倉庫を借りる最大の注意点】原状回復について解説
トラブル対処は経験豊富な不動産会社に
倉庫は数ある物件の中でも比較的トラブルが起こりづらい物件であるといえますが、それでも発生するトラブルは費用負担が大きいものが多く内容もなかなか重いです。
間違いなく言えるのは、全て契約時の準備でお互いが予め懸念事項を合意のもと契約を結ぶというのが最も大切な気がします。そして、そこにトラブルを防ぐための条文を盛り込んだ契約書を作成することができれば1度もトラブルが起きることなく円滑な賃貸関係が続くということもありますからね。
最後にちょっとしたPRになりますが、埼玉県の倉庫オーナー様であれば筆者企業で適正な管理や契約書の作成などお手伝いができます!是非ご縁を賜れますと幸いです。