相続したり、事業の撤退などで空いてしまった倉庫を手にした場合に、資産運用の一環として賃貸に出して収益を得たいという方が多いと思います。
しかし、突然空き倉庫を賃貸に出すと言っても特に相続の場合は賃貸の知識もなく、どうしていいかわからない・・・という方も多いのではないでしょうか?
もちろん、そのような状態で不動産屋に行くと業者のいいなりになってしまう恐れもあります。今回は実際に倉庫業の管理やサブリース業に携わる宅地建物取引士の筆者が、契約前に確認しておきたい倉庫賃貸の流れと知っておくべき知識について話したいと思います。
空き倉庫の活用は何処に相談する?
そもそも論ですが、空き倉庫の相談にのってくれる不動産業者というのはアパートマンションに比べ極端に少ない現状があります。そのため、倉庫の専門知識がない業者に相談へ行くと、必ず言って良いほど売却を勧められることになります。
そのため、大前提として相談をする際は必ず倉庫業に精通している業者を探す必要があります。実際売却のみの提案は収益の選択肢が限られてしまうので非常にもったいないです。
では、倉庫業に精通している業者とは・・・となりますが、実は地域によっては1社も対応していないなんてことがあるほど少ないのです。もし、埼玉、群馬、東京で空き倉庫の活用に困っているという場合であれば本記事をご覧になってから筆者にご相談ください。
空き倉庫の賃貸はサブリース契約がメイン
空き倉庫を賃貸する際の契約手法は大半がサブリース契約となります。
サブリース契約とはオーナーであるあなたから倉庫業に特化した不動産業者が倉庫の借り上げを行い、その倉庫を物流業者やドラッグストアなど活用してくれる店舗へ貸出しするのです。図で表すと下記のような関係となります。
法律上では転貸借とも言いますが、倉庫業では不動産業者がオーナーから借り上げを行い、オーナーに払う家賃とテナントから貰う家賃の差額で利益を出しています。
この仕組みを見た上でいくら不動産業者が手数料を得るのかという部分ですが、家賃収入の20~30%を手数料として貰うことが多いです。仮に月100万の家賃収入ある場合、常に70~80万が実際オーナーに振り込まれるということです。
不動産投資に興味がある方であれば、サブリース契約はトラブルが多いという話を聞いたことがあるかもしれません。
家賃の保証があるから安心して貸し出したものの、借り手がいつまでも決まらず不動産会社から家賃が払われなかったり、何の予告もなく契約自体を解除されてしまったりなど・・・
こうした問題は企業体質を疑いかねないものですが、これが起こる原因は主にテナントを誘致する力がないのに無理にサブリース契約を取ってしまったため起こることが多いです。
健全な運営をしている倉庫業者であれば、オーナーと契約を結ぶ際に借り手が現れる倉庫なのかを事前に判断してから契約を結びます。
筆者のケースで言えば、調査をしたうえで借り手が現れないようであれば売却を勧めますし、借り手が現れると判断できれば既に築いているネットワークを使って他業者や物流業者などの紹介をもらいます。実際倉庫は中古でも需要が高く、正しい募集活動をすれば借り手は早い段階で現れるわけですからね。
サブリースは不動産業者の取り分が多い?
前述で不動産業者とサブリース契約を結ぶと家賃の20~30%が業者の取り分になることが多いと申し上げましたが、単純に不動産業者が貰う取り分が多すぎると不満を感じる人もいるのではないでしょうか?
しかしながら、倉庫のサブリースにおける不動産業者の取り分に関しては業者によってまちまちです。アパマンのように20~30%持っていくところもあれば、お互いのリスク減らすために家賃の5%などと言った管理会社のような立ち位置で契約を結ぶところもあります。
その他にもオーナーと不動産業者がお互い納得した賃料のうえ賃貸借契約を結び、その後不動産会社が家賃を増額して借り手となるテナントを探すというケースもあります。
倉庫サブリース契約のメリット
個人的には倉庫においてはサブリース契約を結ぶメリットが大きいと感じています。家賃差額による手数料を取られたとしてもおすすめできる理由がいくつもあるのでそれらのお話をしようと思います。
入居するテナントが多い
意外かもしれませんが倉庫の空室率はアパマンに比べても低く、CBREの2019年第2四半期調査によると首都圏では2.7%の空室率となっています。
倉庫は規模の大きいものではドラッグストアや建築資材店、物流業者などの借り手がおり、50坪程の比較的規模の小さい倉庫においても個人事業主や自動車整備関係の業者など借り手は多彩です。
とはいえ、こうしたテナントを個人や一般の不動産業者に頼んで探すとなるとノウハウがなく、中々入居者は決まらないでしょう。
倉庫業に強い業者とサブリース契約を結ぶのであれば、物流、法人顧客と予め築き上げた関係・情報網を使って比較的早い段階で入居するテナントを募ることができます。
契約書作成や事務管理が不要
個人で行うことが難しい契約書作成や原状回復の立ち会い交渉、家賃の収納代行など様々な面でサブリース会社が間に入るのでオーナー側はこれと言って手間の掛かる作業がほとんどありません。
家賃保証による安心感
サブリースでは一括で倉庫を不動産会社が借り上げるので、入居するテナントがいない場合でも安定して賃料収入が期待できます。
ちなみに倉庫におけるテナントとの賃貸借契約では解約の場合6ヶ月前の通知を義務とすることが多く、例えば現在入居しているテナントから解約の通知を受けた場合、次のテナントが決まるまでに6ヶ月の猶予があることになります。
倉庫業に強い業者であればその6ヶ月の期間に水面下で次の借り手を探すことになるので、空室期間を極力減らした状態で入れ替えられることも多いです。
この部分のノウハウを持っていない業者だと万が一、今のテナントが解約となった場合に中々次の入居者を探せず減額交渉を持ちかけれられたりするのだと私は思っています。また、個人でテナントと契約する場合においても、解約通知を受けた際にこの短い期間で次の入居を探せるかは難しいでしょう。
家賃滞納・トラブルの対応を代行
直接大家とテナントが契約を結ぶと、ビジネスパートナーであると同時に直接の利害関係者にもなるので、何かトラブルが起きた際に解決できない状態に進んでいく可能性があります。
こうした問題が起きた際に、テナント側が法律知識を備えた法人などであると大家側にとって意図せぬ不利益を被ることもあるので、専門知識を持ったサブリースをする不動産業者が入ることで中立な解決策などの提案をできます。
また、家賃滞納が発生した場合も大家が個人で貸出しをしている場合、大変な負担となります。電話や訪問、更には内容証明郵便による督促など煩雑で心情的にも良くない作業が続くことになるので、こうした督促業務についても不動産業者に任せっきりにできることは大きな安心感に繋がるはずです。
倉庫を貸すまでの流れ
倉庫を実際に貸したい場合は倉庫業に精通した不動産業者に問い合わせを行い、各種ヒアリングされることになります。必要に応じて、登記簿謄本や固定資産の課税証明ができる書類を用意して頂き、不動産業者は物件の査定と調査を行います。
物件の査定
賃貸借契約を結ぶ上で、まずは現地の物件を確認して賃料の設定を考えます。
倉庫の賃料については路線価や取引事例などを用いて考えることが一般的ですが、実際にテナントの立場に考えると物流業者であればトラックの搬入を考え前面道路が広い物件が好まれますし、飲食、ドラッグストアなどの来店型の店舗であれば周辺の居住環境や交通量の多さも重要ですのでそうした部分も勘案されます。
また、倉庫自体についても経年劣化や駐車スペースなど総合的な点検を行うことで借り手の現れる賃料を算出します。貸し出すタイミングで窓ガラスや屋根の修繕などをすることでより入居者が集まりやすくなりますが、こうした修繕費はオーナー負担となるので見積もり提示金額から判断する必要があります。
物件調査
倉庫を賃貸する上で、不動産業者が法令上の制限等の確認を行うことも重要な役目です。特に倉庫業においてはテナント側が営業倉庫として認証の取れる倉庫を探しているケースがあり、仮に貸しだそうとしている倉庫が認証の取れない物件なのに契約を結んでしまうと大変なことになってしまうからです。
その他にも、倉庫が国や自治体の建築条件に合致した内容で建てられているのかなど、都市計画図や建築概要書など様々な書面による調査を行い、適法に貸し出すことができるのかなどを調査していきます。
こうした不動産調査の部分においても、業界に精通していない場合多くの時間の要すことになるので任せっきりにできるサブリース契約のメリットと言えるかもしれません。
賃貸借契約(マスターリース契約)を結ぶ
提示された賃料などの条件が納得できるものである場合は、不動産業者との賃貸借契約を結びます。ちなみにサブリースの場合は大家さんと不動産業者が結ぶ契約をマスターリース契約とも言います。
家賃については現状のローン残債や維持費である固定資産税などの支出を見た上で判断をするようにしてください。倉庫については利回りが5%を越えるようなものも多いですが、あくまでも「オーナー目線で儲けられるのか?」この部分が最も重要なので採算が合わないようであればそこで初めて売却の方へ舵を取ることも考えられます。