住宅は人生最大の買い物を言われるプレッシャーからか、土地探しに慎重になり疲れてしまう方が多いそうです。そもそも土地探しって初めての経験なのに調べることが多すぎて流れがわからず、それが正しい判断なのかもわからないってことが多いと思います。
そこで今回は元ハウスメーカー現役宅地建物取引士の筆者が土地探しで疲れないために知っておいた方が良い知識と探すコツについて解説いたします。是非参考にされてみてください。
予算を決める
土地探しやハウスメーカーを決める前に大前提となるのが自分がいくらの住宅ローンを組めるのかを知って正しい予算を決めるということです。ちなみにローン借入可能額については職業や年収、勤続年数、自己資金割合などあらゆる部分を審査されたうえで決まるので一概には言えません。
そのため、家探しの一歩目に動く事は予算に合わせたマイホーム探しができるようにFPや住宅相談窓口で自身の借入額がどのくらいになるのか相談をすることです。
ちなみに予算はハウスメーカーや不動産会社に足を運ぶことでも相談ができますが、企業によっては自社の物件を売るために、その内容に合わせた借入額や資金計画を提示するので負担の大きい内容となることもあり注意が必要です。
そのため、まずは第三者的な立ち位置となる機関や専門員に相談することをおすすめします。
土地とハウスメーカーどちらから決める?
土地無しの状態から新居を探すとき、土地から探した方がいいのか?それともハウスメーカーを先に決めた方が良いのか非常に迷う問題だと思います。しかし、これらは土地を先行して探すことの特徴を知ることでどちらを優先して探すべきかの答えがでてくるはずです。
【土地先行探しの特徴】
土地先行で探すメリットは必要予算が早い段階で明確になるということです。
これがどういうことかと言うと、土地が決まれば後は建物の間取りを各社で当てるだけで土地費用+建物費用+諸費用の総額を早い段階で知ることができます。選ぶ土地によって水道引き込み費用など追加で掛かる費用が変わるので、この部分を先に知っておこうという考えです。
反対に建物のメーカーや間取りを先に決めてから土地探しをすると、建物の見積もりが出されてもその土地ごとに掛かる付帯工事費用によって予算を超えてしまうことがあります。
また、煽り文句に聞こえるかもしれませんが土地は皆様が思っている以上に早く売れてしまうのでこうした面からも土地を先に探すことをおすすめしています。
土地探しに疲れる人の多くは物件を決めきれず次々と購入する機会を逃し、最終的に自分が考える優先順位までもわからなくなってしまう・・・というケースが実務上では多いように感じ、これを防ぐのであれば土地から先に探し条件に見合う物件があれば素早く契約をすることです。
【建物を先行して決める場合】
○○ホームのファンなど、どうしても建てたい会社があるのであれば、そのハウスメーカーでプランを作りつつ建築条件付き土地の紹介などを受ければ契約までの道のりは早いです。
しかしながら、そのハウスメーカーが土地情報を豊富に持っていない場合はこちらのケースでも土地を探すのに苦労します。こちらの場合はプランがほとんど確定しているので、その間取りや仕様が実現できる土地を探す必要があり、前者よりも選べる物件が限られてしまうためです。
土地探しが疲れる理由
土地探しで大事なことは自分の求める条件に優先順位を決めて判断をする。これに尽きます。
よく100点満点の土地はこの世に存在しないので妥協点を受け入れつつ探すことが大切と言いますがこれは正にその通りです。しかし、おそらく多くの人がそれを承知のうえで土地を探していると思いますが、それでもなぜ疲れてしまうのか?
それは、当初に決めた条件で土地を探すうちに次から次へと新しい知識を身につけ条件が変わってしまったり、優先順位に変動がおきてしまうためです。
例えば、当初駅徒歩○分・南向き道路を絶対条件として土地を探し始めたものの、勉強をしながら探しているうちにスーパーが近い、ハザードマップに該当しない土地など次から次へと条件が出てしまうとおそらく土地を決めることはできません。
土地探しに時間の掛かっている大半の人は誰もが望む条件を追加していく傾向にあり、こうした条件を追加していくとそれは誰もが欲しがる土地なので当然予算は跳ね上がります。
そうなると今度はエリアなどの変更を余儀なくされ、そうこう迷っているうちに検討していた物件は次々と売れてしまいます。こうしたことが続くともはや土地をどう選べば良いのかわからなくなってしまい、迷路に嵌ってしまうのです。
理想の土地を見つけるコツ
疲れない土地探しをする上で最も大切なのは前述したように事前に算出した自身の借入可能額+自己資金(予算)を前提に優先順位と条件を明確にして土地を探すことです。
ここでは、長年ハウスメーカーとして土地探しのお手伝いをしていた筆者が土地を探す上での基本と知ると優先条件に入りやすい条件について解説をしていきますので参考にされてみてください。
周辺環境・駅までのアクセス
優先度:激高
費用:利便性が上がるほど高くなる
土地探しにおいて周辺環境や駅距離は最も高い優先度で選ぶことが大切です。周辺環境においてチェックする項目は主に以下となるでしょう。
ただ、多くの人は言われなくてもこちらの部分を最優先に探されていることと思いますので基本的な部分は説明を割愛させて頂きますが、大切なのはこちらの条件を最優先に考えた場合に絶対守るべきは予算内に収まることができるかという部分です。
スーパーや小学校、病院と言った生活施設が近い土地というものは土地値自体を大きく引き上げる要因とはなりませんが、駅までの距離については徒歩10分以内と20分以内とでは土地の値段が大幅に変わります。
そのため、駅距離について条件があるものの市場に出ている物件では予算内に収まらないという場合は以下のような対応が必要となり、これを受け入れなければおそらくこの先も土地を買うことはできません。
- 徒歩○分の条件を緩和する
- 急行の停まらない最寄り駅へエリア変更する
- 下り方面へエリアを変更する
- 路線を変える
- バス便可に変更する
- 予算を上げる
厳しいようですがなぜこんなことを言うのかというと、私が実務上で案内をしていたお客様で土地を買う・買わないの判断は大半がこの部分で決まっているからです。
諦めきれず様々なハウスメーカーや不動産業者を回ってもおそらく出てくる土地には大きな差がなくこうした様々な業者と関わること自体が疲れる要因ともなってしまいます。
エリアを変えたらそもそも本末転倒ではないかというお話もご承知のうえで言わせて頂きますが、駅距離についてはそれだけ費用が上がる項目であるので最も時間を掛けて吟味する必要があるのです。
土地の広さ
優先度:高
費用:広くするほど価格が大きく上がる
土地探しの基本は土地の広さや形状から始まります。一般的に土地の探し方としては家族構成と駐車場の有無によって必要な広さの基準が変わります。
この必要な広さについては国土交通省発表の「住生活基本計画」において家族構成別で建物の理想の広さを明示していまして、ここから必要な土地の広さを逆算することもできます。
別紙3 誘導居住面積水準
誘導居住面積水準は、世帯人数に応じて、豊かな住生活の実現の前提として多様
なライフスタイルに対応するために必要と考えられる住宅の面積に関する水準で
あり、都市の郊外及び都市部以外の一般地域における戸建住宅居住を想定した一般
型誘導居住面積水準と、都市の中心及びその周辺における共同住宅居住を想定した
都市居住型誘導居住面積水準からなる。
その面積(住戸専用面積・壁芯)は、別紙1の住宅性能水準の基本的機能を充た
すことを前提に、以下のとおりとする。
(1)一般型誘導居住面積水準
① 単身者 55 ㎡
② 2人以上の世帯 25 ㎡×世帯人数+25 ㎡
(2)都市居住型誘導居住面積水準
① 単身者 40 ㎡
② 2人以上の世帯 20 ㎡×世帯人数+15 ㎡
注1 上記の式における世帯人数は、3歳未満の者は 0.25 人、3歳以上6歳未満の者は 0.5 人、
6歳以上 10 歳未満の者は 0.75 人として算定する。ただし、これらにより算定された世帯人
数が2人に満たない場合は2人とする。
2 世帯人数(注1の適用がある場合には適用後の世帯人数)が4人を超える場合は、上記の
面積から5%を控除する。
3 次の場合には、上記の面積によらないことができる。
① 単身の学生、単身赴任者、被災者、失業等により収入が著しく減少した者等であって一
定の期間の居住を前提とした面積が確保されている場合
② 適切な規模の共用の台所及び浴室があり、各個室に専用のミニキッチン、水洗便所及び
洗面所が確保され、上記の面積から共用化した機能・設備に相当する面積を減じた面積が
個室部分で確保されている場合出典:国土交通省住生活基本計画
一般型が戸建て・都市型がマンションを想定しているので、ここでは一般型を基準に考えます。例えば注文住宅の建築を検討している3人家族であると快適な暮らしができる建物の必要な広さは100㎡(約30坪)となるので、その住宅が建つ広さの土地を検討すれば良いのです。
建ぺい率・容積率を知る
土地はエリアによって建物を建てるため様々な基準が設けられており、その代表的なのが建ぺい率と容積率です。
建ぺい率とは土地(敷地面積)に対して建てられる建築面積を指しており、例えば100㎡の土地で建ぺい率が50%であると50㎡までの建築面積の住宅が建てられます。
容積率とは、より立体的な構造の制限を加えるもので土地(敷地面積)に対して建てられる延べ床面積を指します。延べ床面積とは各階の床面積を合計した数字のことであり、例えば上記図のように容積率80%・100㎡土地であれば各階合わせて床面積80㎡までの住宅を建てることができます。
ちなみに気になる土地の建ぺい率・容積率がわからないという場合はその土地のある市役所の都市計画課を訪ねれば教えて貰うことができますよ。
必要な土地の広さを算出するのが難しい・・・と感じる場合は大半の場合で100㎡の土地であれば建物3~4LDK+駐車場1台の間取りが実現できるので100㎡を基準に考えると良いでしょう。
前面道路の条件
優先度:高
費用:幅員が広いほど高くなる傾向
車を通勤で使うなどの理由がある場合に優先度が高くなる項目ですが、前面道路は広さはもちろん、私道か公道かによっても土地の値段が変わることがあります。
私道とは国や市が管理しているものではなく、ご近所さんなど誰かの所有物である道のことで、見た目が普通の道路でも調査をしてみないとわからないケースがあります。
建売業者の分譲地やハウスメーカーの建築条件付き土地などでは権利関係が解消されていることが大半なので私道でもあまり心配はありませんが、個人が売主となる土地の中で極端に土地の値段が安い場合は必ず理由があります。
具体的には前面道路の所有者を特定出来ないなど権利関係を解消できない土地や接道要件を満たしていない再建築不可物件など。道路に関しては内容によって建築に制限が掛かる問題が多いので一概には言えませんが、相場より安い私道の土地は要注意と覚えておきましょう。
(物件)接道の方角
優先度:中
費用:南向き100~200万増
角地や前面道路が南に接する南向きの物件は日中に太陽の陽をどの方角よりも長く取り入れることができるので明るいリビングを希望するのなら考えるべき項目と言えます。
方角によって日当たりの差が出てきますが、日照時間順で言うと一般的には南→東→西→北の順に室内が明るくなると言われています。太陽の動きから東は午前中の日照時間が長く、西は午後の日照時間が長いです。
北道路の物件については方角から見ると終日で陽の光が入りづらいことになりますが、メリットは土地の値段が安くなる傾向にありまして、庭を広く取ることによって採光を取り入れることも可能です。また、日差しが強くないので夏場でも涼しいなど実務上ではあえて北道路の物件を選ぶお客様もいます。
南向きの注意点
南向きの物件を希望する場合には前面道路の交通量にも注目する必要があります。いくら日当たりが良いからと言って、通行人からリビング内部が見えやすい状況にあると視線が気になり最悪シャッターを閉めっぱなしになります。
ハザードマップの有無
優先度:高
費用:該当しないほど高くなる
ここ数年で異常気象がメディアでよく取り上げられ、ハザードマップの注目度が格段に上がってきています。
ハザードマップとは、不測の災害が起きた際のリスクを視覚化したもので主に洪水・内水(雨)・土砂災害・液状化・地震・高潮などのマップが市町村で公開されています。また、多くの市町村では【○○市 ハザードマップ】と検索をかけることでWEBからデータを閲覧できるようになっているので対象地がどんなハザードに該当をしているのか事前に確認しておくと良いかもしれません。
洪水ハザードマップ
出典:さいたま市洪水ハザードマップ
埼玉県さいたま市の洪水ハザードを例にとると72時間の総雨量が荒川流域で632mm・入間川流域で740mmに達した時に上記図の被害が想定されています。
赤になっている箇所は5mを越える浸水が予想されており、場所によっては戸建てが丸々水没してしまうところもあると言うことです。この図を見ると洪水が非常に怖いものと感じますが、実際にこの総雨量は起こりうるものなのか疑問に思う場合はアメダスの総雨量等を見ると良いかもしれません。
ちなみに埼玉県で言いますと天候の変動が激しい山間の秩父浦山観測所において過去観測をされていますが、人口密集地となるエリアでは一度も観測をされていません。
実務上の話をさせて頂くと、春日部や越谷など水系の多い地域によっては全域がハザード対象地となることも珍しくなく、場所によってはそもそも避けるのが困難なケースもあります。
内水ハザードマップ
出典:川越市内水ハザードマップ
洪水が河川の氾濫を表すものであれば内水は雨(集中豪雨)によって起きる被害の想定マップです。川越市を例にすると黄色く色のついている所は過去に浸水が起きたり予想されるエリアで、住民からの通報のあった所や市の職員が豪雨発生時に土嚢を配備した所に記録をつけているとの事でした。
内水については土地が低い地域や水が溜まりやすい、排水整備が整っていないなど様々な事情で発生するものでありますが、内水ハザードを見ることで対象地が水が溜まりやすい場所なのかを知ることができます。
土砂災害ハザードマップ
出典:川越市土砂災害ハザードマップ
土砂災害ハザードマップは指定された土砂災害警戒区域・土砂災害特別警戒区域に対して土砂災害に関する情報の伝達方法、指定避難所の場所、避難方向の目安等を視覚化したものになります。
数あるハザードマップの中でも土砂災害については場合によって突如として起き逃げる時間がない場合があるため非常に重要な資料となり得ることがあります。
地震・液状化ハザードマップ
地震による揺れやすさ、水分が地表に出てくる液状化のしやすいエリアを知ることができるのが地震ハザードや液状化マップです。液状化や地震で揺れやすいということはそれだけ建物の倒壊リスクがあるので家を長持ちさせたいと考えている方は参考にした方がよい資料です。
また、こうしたエリアに該当する所は地盤が緩い可能性も高く、注文住宅の場合は地盤改良費の予算を予め資金計画に入れておく必要があると思います。
地盤改良費とは建物を建てる土地の地盤が軟弱である場合に行う補強工事で100~200万の費用が掛かるものであり、しかも土地の契約後でないと地盤改良が必要かどうかわからないケースが多いので費用がどれくらい掛かるのか直近まで読めないものでもあります。
今昔マップで過去の土地を知る
出典:今昔マップ
土地についてより深く知りたいという場合は「今昔マップ」で過去の土地について知ることもできます。(対象外エリア有り)
こちらは現在地図と古い地図を対比しながらかつての地形が表示される便利なマップです。今昔マップを活用することで購入を検討している土地が過去に沼地だったり、田畑だったなど現在の見た目から知ることができない情報を確認できるので強固な地盤である保証が欲しい場合などに活用することができます。
建築条件付き土地を検討する
優先度:中
費用:相場より安いことが多い
土地を探す上で一番大切なのは何度も申し上げておりますが予算を大前提に優先順位を決めるということです。しかし、どうしても欲しい条件を入れると必要な予算に届かない場合やエリアを最優先で土地を決めたいという場合は建築条件付き土地から探してみることを検討しましょう。
建築条件付き土地とは、指定の施工会社にて住宅を建てることを条件に売りに出されている土地を指し、簡単に言うと決められたハウスメーカーで家を建てることを条件に販売されている土地のことです。
建築条件付き土地の大半は既に造成工事やライフラインの引き込みなど住宅を建てる上で必要な設備が整っており、経験上ですが土地の値段は相場よりも安くなっていることが多いですし、相場と変わらないとしても造成が済んでいる分、総費用が安く仕上がることもあります。
条件付き土地を選ぶ際は、指定施工会社の建築単価を知ることで総費用が把握しやすいので、気になる土地があれば希望する間取りの建物代がいくらになるのかを確認してみましょう。
ただ、条件付き土地の場合は3ヶ月など決められた期間で間取りの打ち合わせを終わらせて請負契約を結ぶなどの制約がある場合もあるので若干急ぎ足で着工に進むこともあります。
未公開物件の土地は大半が建築条件付きの土地である
余談ですが、様々な土地情報を知りたくて複数のハウスメーカーや不動産業者を回る場合、その業者だけが提供できるいわゆる「未公開物件」は大半がこの建築条件付きの土地です。
筆者の勤めていたハウスメーカーを例にすると、スーモなどのポータルサイトに載せていない建築条件付きの土地をあえて用意しておき未公開物件として来店したお客様にご紹介する用の土地がありましたからね。おそらく他社でもこうした形で未公開物件を用意していると思います。
土地探しはタイミングも大事
土地探しについては上記の基本となる情報と買っていけない土地の特徴を踏まえることで失敗を最小限に抑えることができます。
【関連リンク】
しかし、土地は世界に一つとして同じ物が存在しないので時期や要望によっては納得できる物件が一つもないなんてこともあるでしょう。そうした時に大切な姿勢は、条件に合致する土地がでたら迷わず購入に進むということです。
あなたが理想の土地が見つからないと思っていれば、それはおそらく多くの人が同じエリアで同様のことを思っています。そんなときに気になる土地を紹介されて検討していたらあっという間に売れてしまったなんてことが本当に住宅業界ではよく起きるためです。
とはいえ、人生の中でも大きなイベントとなる土地探し。当サイトでもそんな方達にとって有益な情報が発信できるよう今後も記事を増やしていきますので是非素敵なマイホームの実現をされてください!