相続した店舗や倉庫のテナントが出られた時に、多くのオーナーは新しいテナントを不動産会社に探してもらうか売却をお願いすることになるかと思いますが、「検査済証」の有無が物件について大きな影響を与えることをご存じでしょうか。
日本国内の建物は上記で挙げた3つの検査をクリアして、そのお墨付きとなる「検査済証」が交付されることで第三者から見ても安心安全な建物という評価につながる物なので、その存在は非常に大切です!
そんな物凄く大事な検査済証ですが、昔は葉書サイズのもので最近ではA4のペラ紙一枚の存在なので非常になくしやすい。。。そして、バツが悪いことにこの検査済証は無くすと2度と再発行されません。
そしてこの検査済証の有無は店舗や倉庫のオーナーにとって大きなデメリットが発生します。今回は実は物凄い大事な検査済証についての解説です。
検査済証がない場合のデメリット
店舗や倉庫として貸出すor売る予定の物件に検査済証がないと様々な弊害が発生します。
銀行の融資が出づらい
建物自体に本来あるはずの検査済証は前述したように第三者から見てもわかる建物品質を保証した書面のような存在です。エンドユーザーや法人に貸出す銀行についてもこの存在は特に重要視している項目の一つであり、例えば店舗を売却しようとして幸先よく買主が現れたとします。
その買主は事業用ローンを金融機関に打診して組もうとしますが、建物品質を担保する検査済証がないことによって評価が下がり、融資額の減額や0回答と言ったマイナスな回答を出す可能性があります。買主がローンを組みづらい物件=売りづらい物件になりうるのです。
許認可の取得ができない
店舗や倉庫は本来様々な業種のテナントが入りうる可能性がある投資目線で見ても魅力的な物件であることは間違いありませんが、業種によっては営業許可取得の条件として「検査済証」を必要としていることもあります。
筆者が経験したケースで言えば、オーナー様から募集を依頼されているコンビニ跡地の物件に福祉系(デイサービス)の業種となるテナント様が入居希望をされていましたが営業を開始するにあたり行政から検査済証の提出を求められるも書類がないため営業許可が下りなかったこともあります。
検査済証が無い=利用できる業種が減少することから機会損失を生む可能性があるのです。
増改築や用途変更ができない
店舗物件を居抜き貸し出せれば問題ありませんが多くの場合、テナントが変わると事務所→飲食店など用途自体が変わることが往々にしてあります。こんな時に検査済証がないと許可が下りないので物件を借りられるテナントが限られてしまい、大きな機会損失が発生してしまいます。
賃料や売却価格の減額要素になる
検査済証がないと、利用できるテナントが限られるのでいわば需要の少ない物件ということになります。当然これらの要素は収益を生む賃料や売却額にも影響を与えることになります。
実務上の話しで言わせて頂くと、賃貸の場合は条件に合うテナントが限られることから借手が中々見つからず空家賃が発生し続けるので、やっと来たテナントから家賃交渉を持ちかけられやすいなど・・・不動産の相場に詳しい相手方から交渉を持ちかけられることもあります。
売却に関しても、同じ理由で指値交渉が入ることもあります。ただ、この点は事業用不動産の場合、立地や前面道路の環境等で検査済証がなくても需要の多い物件もあるため一概には言えません。
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検査済証のない物件はどれくらい?
さて、ここまでの時点で検査済証がいかに大切なものかご理解頂けたかと思いますが、実は検査済証の無い物件は事業用不動産・住居に関わらず無数に存在します。
出典:国交省
なんと平成10年では検査済証の交付率が40%未満と実に半数以上が検査済証無の物件と言うことになります。これだけ大事な書類なのになぜ無いんだ!という声が届いてきそうですが、これには3つの理由が考えられます。
1.検査済証の紛失
検査済証は建築会社から渡される書類の中にさらっと紛れ込んでいる1枚の書類なので、知らないうちに紛失をしているという方がいらっしゃいます。これについては自身の保管体制に不備があるということで納得がいくと思いますが、次に挙げる内容からは納得いかない理由も含まれます。
2.完了検査を受けていない
検査済証は簡単に言うと確認申請を行った建物を申請通りに建てているかを確認する書類ですが、建築会社が確認申請を行ったもの完了検査を受けていないがために検査済証を取得していないというケースもあります。
なぜ、そんなことをするのか・・・と思われるかも知れませんが昔はこの検査済証が今ほど重要なものではなく、完了検査を受けないことに対する罰則もありませんでした。
そのため、建築会社からすれば請負契約の工事金額を回収していればそれで良しとするところも残念ながら存在し、今になってその検査済証無しが響いてしまっているパターンもあります。
また、これは完全に悪意か何かしらの当時の事情があったのか不明ですが、確認申請で提出した図面と内容の違う建物を作ってしまったために完了検査を受けていないというケースもあります。いわゆる違反建築物という扱いです。
検査済証がないことの救済措置はある?
検査済証はテナント募集に際して一つのポイントになる存在ですが、もし見つからない場合は下記の方法で対応することができる場合があります。
台帳記載事項証明書を取得する
台帳記載事項証明書とは、不動産業者のあいだで「済証に変わるもの」として言われることの多い書類ですが、これは物件のある役所の建築指導課などで発行してもらえます。
この台帳記載事項証明書を役所で取得すると下記のような項目がわかります。
- 建築確認済証の交付年月
- 検査済証の交付年月
つまりこの書類で検査済証の交付年月や番号がわかることで、検査済証の書類が手元になくとも検査は受けているということがわかるわけですね。実際、物件を運用する上で本来必須となる検査済証が無い場合でも、この書類によって検査済証があるものとして用途変更や増築など行政上の認可が下りるケースもあるので紛失している場合は第一に取得するべき書類と言えます。
しかし、時期や都道府県によってこれらの情報が載っていないこともあります。
その場合は、類似の書類である「建築計画概要書」や「建築確認台帳」の書類を取得すればこちらの書類に検査済証の交付年月などが記載されている場合もあります。
検査済証の取り直し
上記の救済措置はあくまで当時検査済証を取得していたにも関わらず紛失してしまった場合に有効となる方法ですが、場合によっては申請をしないまま増改築を行ってしまったり、そもそも検査済証の取得を当時からしていない物件の場合はどうでしょうか?
こうした場合は、建築士による建物自体の詳細な調査を依頼することで解決できる場合もあります。
長くなるので、端的にはなりますが現状の状態を有資格者が調査して第三者機関による違反建築物でない証明等を取得するのです。ただ、これは数百万単位の費用が掛かるケースもあるため非常に負担の大きい方法と言えます。
判断に迷う物件があれば専門不動産業者に依頼
検査済証がないけれど、物件を貸したり売ったりできるのか・・・これは一般の方であると非常に迷われる問題であると思うので、住居なら住居、倉庫なら倉庫・・・と言った専門業者に物件の運用方法を相談するのが最も安全でリスクの少ない方法と言えるでしょう。
ただ、この部分は不動産会社にもそれぞれの強みがあるので一概に知り合いにいるから頼むというのは若干危険な気もします。なので、業者選びが非常に大切というわけです。
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