一般的に建物が建てられない市街化調整区域は資産価値が低く、中には無償でもいいから手放したいという人も出てくるほどです。
しかし、市街化調整区域と一言で言っても地目は23種類もあり、その中でも雑種地は売却や資産運用の観点から時には高値で取引をされることもあるのです。今回はそんな調整区域の雑種地について調整区域の資産運用を専門に行う埼玉の宅建士である筆者が解説します。
雑種地とは
そもそも雑種地とは下記にあるいずれの地目にも該当しない土地のことを指し、主に現況では駐車場や資材置き場として活用されることが多い土地です。
【地目一覧】
- 宅地
- 田
- 畑
- 牧場
- 原野
- 塩田
- 鉱泉地
- 池沼
- 山林
- 墓地
- 境内地
- 運河用地
- 水道用地
- 用悪水路
- ため池
- 堤
- 井溝
- 保安林
- 公衆用道路
- 公園
- 鉄道用地
- 学校用地
個人が所有する土地において最も高く売れる可能性があるのは住宅が建てられる宅地になり、調整区域に代表される田、畑、山林、雑種地は宅地よりも著しく土地の評価が下がります。
しかしながら、雑種地においては地目の転用ができるケースがあるために、こうした手続きをすることで高値で売却することもできれば賃貸として活用することもできる調整区域にありながら多くの可能性を秘めた土地とも言えるのです。
ちなみに、現在所有している土地がどういった地目になるのかわからないという場合は法務局に赴き登記簿謄本を取得することで地目を確認することができます。
建物が建てられる土地であれば価値があがる?
前述のように市街化調整区域では基本的に建物を建てることができないために土地の評価額も宅地に比べ下がりますが、実は条件次第で建物が建てられることもあるのです。また、雑種地であれば田や畑の地目に必須となる農業委員会への許可が必要ないので建築物の可能性も更に高まります。
例えば筆者が住まう埼玉県川越市を例にすると、都市計画法34条1号の審査基準において条件を満たした場合に以下のような建築物が例外的に可能となることがあります。
- 小学校・中学校
- 幼稚園
- 保育所
- 特別養護老人ホーム
- 診療所
- 助産所
- 柔道整復師の施設所(床面積150㎡以内)
- 自動車修理工場(床面積150㎡以内)
出典:川越市法第34条第1号審査基準より一部抜粋
もちろん、これらの案件は開発協議と言って個別に市へ相談を行う必要があり、確実に認可が下りるというものでもないのですが、もしこうした土地にありながら建物が建てられると知らずに無料同然で土地を手放してしまうとしたらどうでしょうか?
こうした建築物を考えている買手が潜在的にもいたらそれは適正価格での売却・賃貸ができる可能性があるわけで非常にもったいない話ですよね。
沿道サービスとして土地を売却
上記のように市街化調整区域でも場合によっては資産価値を持つ土地となりうることがあります。そして、もう一点調整区域の資産運用として有効なのが都市計画法34条9号関連であるいわゆる沿道サービスとしての利用を検討するということです。
これは市街化調整区域でも多くの人が住まうことからその地域に必要な生活関連の施設は特別に認めるという許可のことで多くの自治体で実施されている制度です。具体的には沿道サービスの場合は以下のような建築物が建てられる可能性があります。
- コンビニ
- ガソリンスタンド
- 医療施設
ただし、前提として幅員12m以上の市道に6m以上の間口で接するなど細かい条件やこちらも個別に協議を行う必要があることから調査をしてみないことにはわかりませんが、実は調整区域であってもこれだけ土地の活用できる可能性があるのです。
事業の拡大により更に用地を広げられる可能性も
上記のような許可制度を使って仮に建築物が建てられる場合は調整区域であっても更に用地を広げられることがあります。例えば過去に筆者が携わった例を挙げると、こうした制度を使って調整区域の土地に建てた物件の事業が軌道に乗り、更に集客を見込むために隣の雑種地を更に駐車場用地として利用することの認可が下りるなどのことも過去にあります。
調整区域の雑種地は接道状況がカギ
こうした建築物を建てられる土地であれば買手は後々現れる可能性が高いです。しかし、前提として建築物を建てるにはその土地が前面道路に接道をしていたり、幅員、間口の広さなどがポイントになります。
特に接道さえしていれば、建築物が建てられなくても資材置き場や駐車場、太陽光パネルの設置など資産運用として検討できる要素がいくつかあるので正しい物件調査をできる業者に相談するまでは諦めてはいけないと個人的に思っております。
市街化調整区域を得意とする不動産業者に相談
ここまでで、調整区域の土地活用についての可能性を解説していきましたが、最も大切なことはこうした市街化調整区域の土地活用に精通している不動産業者に相談をするということです。
例えば、交通量が多く接道状況の良い調整区域の土地を持っていても、こうした調整案件に精通していない不動産業者に相談してしまうと経験がないものですから調査の仕方もわからず売れないと断定し断られてしまうことになるのでしょう。
しかし、調整案件に詳しい業者であれば現況から最も良い運用や売却方針を伝えることができます。
例えば、対象地が沿道サービスの特例が使えると判断できれば、予め大型商業施設や医療施設など開設を検討している関連業者に土地の紹介するなど他業者では調整区域というだけで0円査定だった土地が数千万で売却できたということも考えられます。
もちろん、どうやっても手立てのない土地というのもありますが・・・大事なのは諦める前にまずは調整案件に詳しい業者に土地の相談をしてみるということです。
どんな土地でも大切な資産です。また、埼玉県であれば調整区域の土地でもオーナー利益を追求した提案ができると思いますので気になる方はお問い合わせください!後悔ない運用を共に目指しましょう!
※本記事は2022年7月執筆です。法令の変更等により内容や情報に変更がある場合がありますことご了承ください。