複数社の不動産業者に査定額を出してもらえる一括査定サイトの利用をする人が最近増えているらしいですね。
・・・でも、こうしたサイトを使って査定額を出すとA,B,C社とそれぞれ提示される査定額が違うことに疑問を持たれる方も多いのではないでしょうか?
この問題ですが、不動産業者がどうやって査定額を出しているのか知れば解決します。
今回は、自分で自宅の売却査定額を出したい時に使ってほしい不動産業者が使う査定額の出し方をわかりやすく解説します!
不動産業者はどのように売却査定をしているのか
不動産業者に売却物件の相談にいくと、まずは売出し価格となる物件の査定を行ってもらいますが、大手でも小さな不動産業者でも価格査定の方法はほぼ同じです。
不動産の価格は後述する複数の計算方法+周辺環境などの外的要因を考慮した形で価格を算出するのですが、それらの基本となる計算式があります。今回はこうした計算を解説します。
素人でもできる不動産価格の算出方法
実際にどんな方法を使って不動産価格を算出するのかと言うと、土地の場合と建物の場合でそれぞれに以下の計算方式を使って価格を算出します。ちなみそれぞれを細かい部分まで完璧に説明しようとすると書籍レベルの内容になってしまうため、ここでは要点と計算の仕方をわかりやすく解説していきます。
土地 |
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建物 |
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これから各計算方法の解説にあたって、はじめに物件について知っておいて欲しいことがあります。それは売却しようとしている物件の土地面積と建物の延べ床面積、築年数を把握しておくことです。
土地の面積について正確な数値がわからないという場合は、法務局で土地の登記簿謄本を取得しておくことをおすすめします。
固定資産税路線価
固定資産税を算出するために作られた固定資産税路線価は、価値の算出という名目から売却査定時にも使われます。具体的な見方ですが、全国地価マップというサイトで公表されていますのでまずはそちらのサイトを開きましょう。
リンク:全国地価マップ
サイトを開くと上記ページになるので、ここでは【固定資産税路線価等】をクリックします。
すると、地図が現れるので売却したい物件の存在する都道府県・市町村を選択しますと以下のような地図が出てきます。
左上の検索窓に住所を入力することで、その物件の固定資産税路線価が把握できます。ここでは埼玉県川越市を例に解説します。
ここでは川越市役所を出してみました。道路部分にある矢印線と数字が固定資産税路線価です。この数字を下記の計算方式に当てはめて固定資産税路線価からみる売却価格を算出します。(土地面積を100㎡と仮定して算出しています。)
【固定資産税路線価からの計算式】
146,000/㎡×100㎡(土地面積)÷0.7=20,857,142円
【坪単価の計算式】
100㎡÷3.3058=30.249坪
20,857,142÷30.249坪=@689,515円
上記川越市の土地は固定資産税路線価から計算すると100㎡で約2000万の価値があるとわかります。一坪あたりは約69万の価値があるということですね。
これで固定資産税路線価から計算する数字が出ました。続いて相続税路線価から売値を出します。
相続税路線価
相続税路線価は、相続が発生した時に土地の評価額を割り出すため使用する道路の価格です。相続路線価は道路の価格なので、土地を評価する上で非常に重要な道路部分が織り込まれている価格と言え不動産業界では重要視される査定方法と言えます。
ただ、ここでは細かい話しをしてもわかりづらいと思うので計算方法を早速解説していきます。まず、固定資産税の時と同じく全国地価マップを開き【相続税路線価等】をクリックします。
赤丸で囲った場所にご自身の査定したい物件の住所を入力します。すると下記のような画面が出てきます。ここでは同じく川越市役所周辺の土地を例に解説していきます。
川越市役所では西側に165D・南側に160Dの相続路線価が表示されています。数字の後にくるDなどの英字は借地権割合を示していて、対象の土地が所有権であれば気にしなくて大丈夫です。
また、角地などの2方向に接している場合は数字が高いほうを選んでください。ただ、厳密に相続税を計算する場合は奥行価格補正率による計算をする必要がありますが、今回は売却査定として使うので気にしないでください。
・・・どうしても超正確な数値を出したい場合は下記の国交省路線価図の説明から計算を行ってください。
国交省:路線価図の説明
さて、話を戻してこの数字の見方ですが1㎡あたりの価格を千円単位で表示されています。西側の165Dについては1㎡あたり165,000円ということです。ここで出た数字をもとに相続路線価から見る売却価格を算出します。
【相続税路線価からの計算式】
165,000/㎡×100㎡(土地面積)÷0.8=20,625,000円
【坪単価の計算式】
100㎡÷3.3058=30.249坪
20,625,000÷30.249坪=坪単価@681,840円
相続路線価から算出すると本地は約2006万であることがわかります。ただ、相続路線価については道路価格という性質がありますが接道状況や奥行など細かい条件によって複雑な計算を行う必要があるので実際の相続税を割り出すという場合は専門家に相談しましょう。
公示価格
公示価格は国交省の土地鑑定委員会が毎年公示する標準地価格のことです。何のことやらと思うかもしれませんが超かみ砕いて説明しますと、毎年不動産鑑定におけるプロ中のプロが各地域の標準的な土地を選定して1月1日時点の1㎡あたりの正常な価格を公表しているのです。
これから物件価格の算出をするにあたり、対象地周辺にもその標準地の公示価格が出されているはずです。使い方を見ていけばわかると思うので下記をご覧ください。
前述と同じように【地価公示・地価調査】をクリックし、売却の対象地住所を入力して地図をだします。すると、下記のような画面が出てきます。
川越市役所前を例にすると、地図の右側に□で囲まれた部分があります。これが標準地としての選定を受け地価公示された場所です。
この□をダブルクリックすると左側に対象地の情報が出てきます。
左側に不動産鑑定士が調査をした内容が示されており、その中に価格という項目があります。川越市役所から最も近い標準地は1㎡あたり171,000円の公示価格となっていることがわかりますね。
この標準地で算定された金額は近隣の物件にもおおよそ当てはまるだろうという理論のもと公示価格から査定額を算出するのです。
【公示価格からの計算式】
171,000/㎡×100㎡(土地面積)=17,100,000円
【坪単価の計算式】
100㎡÷3.3058=30.249坪
17,100,000÷30.249坪=坪単価@565,307円
これで、3つ指標からみるの売却価格の算出ができましたね。もちろん、公示価格についても実際は選定された物件と環境も違えば大きさも違うこともあると思うので正確な売却価格を算出することはできません。
ただ、このように数々の指標を用いてそれぞれの売却価格を算出していくらで実際に売りに出すのかを不動産業者は提案しているのです。
近隣成約事例
今までの算出は国が公表する指標を使って物件の価格を算出していましたが、近隣成約事例は周辺で実際にいくらで取引されているのかという実際の取引結果をもとに価格を算出する方法です。
この部分に関してはレインズと言われる不動産業者しか見ることのできないシステムにデータが蓄積されているので正確な状況は不動産業者に頼るほかありません。
ただ、現在ではそのレインズと言われるシステムのデータを一部ですが一般の方でも閲覧ができます。それがレインズマーケットです。
こちらで戸建て・マンションに加え、自身のお住まいとなる物件のある所在地を選択していくと下記の条項が一覧で確認できるので、ご自身の物件と似た条件を比較してみましょう。
- 沿線
- 最寄り駅
- 駅距離
- 所在地
- 価格
- 土地面積
- 建物面積
- 間取り
- 築年数
- 成約時期
- 用途地域
上記のように実際に取引された事例を元に、条件が似た物件の※1坪単価(物件価格÷3.3058)を算出し、その1坪あたりの金額を自身の物件に当てはめて計算してみると目安となる金額を算出できます。(※1×土地面積(坪))
マンションの建物価格を知る
土地については、上記であげた各指標を用いることで売り出す金額が見えてきます。しかし、建物については一般的にいつか朽ち果ててしまう人工物である以上、それらの損耗具合や経年劣化の指標を含めた計算をしなければなりません。
そして、マンションと戸建てでは売却査定手法がやや異なるケースが多いです。まず、マンションについては最も信頼できる指標が取引事例法(成約事例)の算出+分譲時の価格を参考にした査定方法です。
マンションの場合、分譲から築年数が経過している同じマンション内で売買の実績が残っている場合が多く、その数字は実際に取引された価格として信頼できるデータになります。
もちろん、南向きや階層と言った個別条件の違いがあるのでそれらの条件を踏まえてアッパーの金額などは調整します。
実際にいくらの差が出るの?と思うかもしれませんが、不動産業者であれば分譲時の各部屋の価格差を知ることができるので新築当時は下層階と上層階でどれくらいの価格差で販売をしていたのかなどを知れるので、そうした数値も加味して査定を行えます。
また、同マンション内において売買の実績がないケースもありますが、実務上マンションの場合だと駅距離が最も重視される傾向にあるので、近隣で間取りや駅距離が近い物件の販売実績を参照して価格を提示するケースが多いです。
戸建ての建物価格を知る
戸建ての場合は主に原価法を用いた計算によって建物の価格を算出します。計算式については下記となります。
再調達価格×延床面積÷耐用年数×残存年数(耐用年数-築年数)
再調達価格とは同等の建物を建築をする際に要する費用を指しておりまして、国税庁では景気によって左右する各年度に関する再調達価格を公表しています。
出典:国税庁再調達価格
そして、耐用年数は国税庁が建物ごとの年数を同じく公表しているのでこれらの数字を物件に当てはめて上記の計算式で査定額を算出するのです。
出典:国税庁建物耐用年数
例えば、下記の条件で実際に計算してみると以下のような金額となります。
【木造住宅】耐用年数22年
築年数:10年
延床面積:100㎡
令和元年に売却
再調達価格×延床面積÷耐用年数×残存年数(耐用年数-築年数)
170,100円×100㎡÷22年×12年(22-10)=9,278,181円
これで土地の価格と建物の価格が算出できました。しかし、この原価法は厳密に言うと建物グレードなどを考慮していないため、物件内の設備や外壁、屋根と言った部分を個別で考慮し計算の増減を行います。
しかし、ここまでで自分自身の住まう物件と土地の金額がおおよそでも分かってきたと思います。
あとは、不動産会社が査定を出した際にその金額に対して高かったり、安かったりと様々な提示がされるかと思いますが、それらの根拠を確認してみてください。指標となる金額が分かっていれば、現実的な提案なのか、それとも根拠のわからない異常な高値査定なのかなど、自分自身で判断ができるでしょう。
埼玉県内で売却を考えているなら
いかがだったでしょうか。今回の計算式は不動産会社の査定で基本となる計算式です。こうした基本を知っておくことで不動産会社の提案が理に適っているのか?はもちろん、騙されるリスクを軽減できます。
是非大切な資産である売却は慎重な判断しましょう!
最後にちょっとしたPRですが、筆者は埼玉県の不動産会社に勤めており住宅の売却にもご好評頂いております。両手取引を狙わない売主様都合を最優先に考えた売却をすることを約束致しますので、是非ご縁を賜れますと幸いです。
ブログでは書き切れない、実務上の傾向やより詳細な個別要因を考慮した売却提案を行いますのでよろしくお願いします!