土地活用の一環として現在所有している倉庫やこれから建てようする倉庫はインターネットにおいてもあまり情報が出回っていませんが、市場では大きな需要がある投資と言えます。
今回は不動産投資の中でもニッチな部類に入る「倉庫」について、現役で倉庫・工場の不動産を取り扱う宅建士の筆者がオーナー目線でメリットデメリットや運用する上での気をつけるべきポイントについて解説します。
倉庫はニッチな投資分野?だから需要がある!
ここで言う貸倉庫とは自身の所有する土地に対し上記のような倉庫を建築し、テナントに貸し出す業態を指します。
そもそも倉庫なんて借り手がそんなすぐに見つかるの?と思うかもしれませんが、よほどテナントが借りづらい場所や賃料でなければ築年数がたとえ古い物件でも適正な募集をかければ短いスパンで成約に結びつきます。
需要に関わる倉庫の空室リスクは?
土地の資産運用や投資で最も大切なことは利回りを上げていくことですが、最も大きく関わる部分は賃料に影響する「空室率」になります。
これは倉庫に限らずアパートマンションを運用する上でも問題になることがありますが、アパマンの場合は人口減少による空室割合が顕著で総務省の住宅・土地統計調査によると2018年では全国で約846万の空き家があるうち約半数が賃貸住宅の空き家となっています。
対して、倉庫についてはCBREの2019年第2四半期調査によると首都圏では2.7%の空室に落ち着いているので、空室リスクについてはアパマンよりも低いということが言えるのではないでしょうか。
そのため、私の結論としてはアパマンよりも空室のリスクは低いと言えます。仮に、埼玉県をはじめとする関東で倉庫の空室でお困りの方がいらっしゃいましたら是非ご相談ください。入居付けのサポートを致します。
貸倉庫のメリット
貸倉庫が資産運用の面でおすすめできる理由はいくつもあります。一言で言えば下記のメリットデメリットさえ抑えておけば大きな失敗がしづらいというのも倉庫の特徴です。
立地を選ばず収益化ができる
アパマン経営の場合はいかに駅から近いかによって入居率の差がかなり大きくでます。対して、倉庫の場合は基本的に入居するのは車で搬入をする物流業者や企業の商材置場、ドラッグストアなどの店舗によるもので、駅近にこだわる必要はありません。
そのため、路線価が低いなど土地としての財産価値が低いエリアにおいても倉庫を建てることで売却するよりも長い目で見て大きな収益を狙えるエリアもあったりすることが魅力です。
維持費がほとんど掛からない
倉庫に貸出についてオーナー側はテナントに対して「箱」としての貸出しをする形なので、内装の工事などはテナントの各自が自費負担において行うのが一般的です。
そして、テナントとの賃貸借契約が解約となる場合は、原状回復の義務を負うテナントの責任によって貸出し時の常態に戻すのです。簡単に言うとオーナー側はテナントの退店入店時に資金の手出しをすることがないので安定したキャッシュフローとなるのが魅力です。
もちろん、築年数による屋根や外壁などの経年劣化によるものはオーナー側の負担となりますが、倉庫は鉄骨鉄筋の柱に外壁と屋根を載せたシンプルな構造になるので修繕費の面でもコストパフォーマンスが高いと言えるのです。
柔軟に用途が変更できる
倉庫って運送会社や雨に濡れたら困る商材の資材置場として使われるイメージがありますが、実は借り手はそれだけではありません。私が取引した事例で言えば、以下のような変わった用途として借りられるケースもあります。
- 野球チームの室内練習場
- スケートボード練習場
- リサイクルショップ
- 会議室
倉庫はいわゆる「箱」として借りての要望により様々な用途に生まれ変わります。前述した空室率に結びつくことですが、こうした柔軟性に富んだ需要が発生するので借り手が全くいないというのは考えづらいのです。
長期契約がメインなので解約による煩雑さを軽減
倉庫を借りるテナントは主に法人や個人事業主と言った事業者となります。これらの借り手が解約をする理由は経営悪化による倒産や事業拡大によって手狭になった倉庫の借り換えが大半です。
言い換えれば、異動や結婚など様々な理由によって入退去を繰り返すアパマンに比べ解約となる理由が限られているのです。
オーナー目線で言うとこうした長期契約を主体とする運用は事務作業の煩雑さや安定した賃料収入に繋がるものなので手間がそれほど掛からない資産運用と言えます。
貸倉庫のデメリット
ここまで倉庫による資産運用のメリットを話してきましたが、もちろんデメリットもあります。運用をする上ではこうしたデメリットの対処を予め考えておくことで最大限の収益を狙えるでしょう。
都市計画により制限されるエリア有り
前述ではあらゆる業態の受け入れができる「箱」として倉庫は需要が高いと申し上げましたが、倉庫の建築されるエリアによっては法令上の制限によって貸出しできる業態が限られる場合もあります。
各市町村では「都市計画図」という各地域によって建築できる建物や営業できる店舗の制限をかけており、場所によっては貸倉庫としての運営ができないエリアなんかもあります。この部分の詳細を調べるには個々で本地に存在にする不動産の調査を必要としますが、過去と現在では法令が変わり今まで良かったものの、現在は貸出しができないなんてこともあります。
既存の空き倉庫の活用方法がわからないという場合はご一報頂けると内容を調べてお答えすることもできるのでお問い合わせください。
空室によるリスクが大きい
倉庫は一度入居がされると比較的長期に渡って賃料収入を得ることができますが、複数の借り手から家賃を徴収できるアパマンと違って倉庫は基本的にテナント1社との契約。解約をされて次が決まらないとそれまでの期間は賃料が発生しません。
簡単に言うと、アパマンは複数の部屋を貸し出すことによって賃料収入のリスクヘッジが自然にできていると言えますが、倉庫の場合は一度解約をされると賃料が100から0になるということです。
ここが貸倉庫最大のリスクと言える問題なのは間違い有りません。解決策としては、倉庫業に特化した不動産会社とサブリース契約を結び賃料によるリスクヘッジを行います。
空室リスクの対策
たしかにサブリース契約は家賃保証を謳いながら突如として賃料の支払いを意図的に怠る業者など、ネットでは「かぼちゃの馬車」事件をきっかけによくない噂が出ています。
しかし、貸倉庫のサブリースについては実務上の話を言わせて頂くと、テナントからの解約を基本的に6ヶ月前から通知する義務が課されるので、通知を受けた段階で水面下で次の借り手を探していくことになります。
6ヶ月の期間であれば、倉庫業に携わる不動産会社のネットワークを使って借り手を集められるケースも多く、比較的にスムーズに入居付けすることも可能です。
貸倉庫におけるサブリースのメリットはこうした倉庫業に強い不動産業者を選べば他業者の力も使って入居者を迅速に集めることができます。
この新たな借り手を探すという部分は自主管理によるオーナー自らが行うことが難しい部分でもありますので、リスクヘッジの兼ね合いから貸倉庫におけるサブリース契約はおすすめできます。
税制面の優遇が倉庫はない?
土地の資産運用の一環として、倉庫と比較される賃貸住宅では固定資産税を減額できる割合が違います。アパマンなどの場合は「住宅」としての軽減措置が用意されていますが、倉庫の場合は非住宅用地の扱いとなるため軽減措置がありません。そのため、節税を期待しての運用という点ではアパマンに劣る部分があります。
貸倉庫は儲かるのか?
貸倉庫は豊富なノウハウを持つ不動産業者と適切な付き合いをすることで空室のリスクを大きく軽減することができるので安定した賃料収入を得ることができます。
しかしながら昨今の事情の踏まえて言わせてもらうと、一番得をしやすいのは既に土地や倉庫を所有しているオーナーになると私は思います。
以前は、一から土地を購入してその上に倉庫を建て賃貸に出すだけでも利益が出せる環境が続いていました。利回り計算にして5%、高くて10%を越えている物件もオーナー様から預かり実際に管理しています。
ただ、現在は土地相場の上昇及び、倉庫の建材となる鉄鋼の物価が大きく上昇しているので新規で建築をする場合に利回りが取れないケースが多いのです。これはウッドショックの影響を受ける木造アパートなどについても同じです。
逆に考えると、100坪を越える土地を既に所有している方や既に倉庫を持っている方は、需要があるのにも関わらず物価高騰により新規で参入しづらい状況が続いているので空室物件に対してますます借り手が増えるのではという予想をしています。
もし、現在土地を持っていて倉庫の建築を考えていたり、既に所有している倉庫の次のテナントの目処が立たない場合はご相談ください。最大限の利益を追求した提案ができるよう努めます。