2021年12月10日の税制大綱によって2022年度における住宅ローン控除の内容が判明しました。今回はこれから住宅の購入を考える人向けにこの住宅ローン控除について改正点のお話をしていきます。
住宅ローン控除とは?
簡単に言うと人生で一番の買い物と言われる住宅を購入しやすくするための政府の施策です。住宅ローン控除を利用することで仕事をする人が納める所得税や住民税が一部控除されるので住宅購入者が金銭的なメリットを受けることができます。
ちなみになぜこんな制度があるのかと言うと、それは住宅購入の流れを国が率先して日本の景気を盛り上げようとしているためです。家を買う際には木材や金具、給湯器やエアコンなど数十万と言われる部材などが動きますから経済の活性化にはもってこいなのです。
住宅ローン控除の適用を受けるには
注文住宅・新築戸建・中古戸建(マンションも含む)など購入物件により条件は異なりますが、それぞれで定められている条件を満たすことができればローン控除の適用を受けることができます。
各建築物の要件についてはここでは書ききれないので国交省のHPをご確認ください。
また、当然ですが住宅ローン控除の名前の通り、この制度は金融機関による住宅ローンを組む方を対象とした制度です。
2021年以前と今の主な改正点
2021年 | 2022年 | |
控除率 | 1% | 0.7% |
控除期間 | 10~13年 | 10年(新築等条件付きで13年も有) |
年末残高の限度額 | 4000~5000万 | 3000~5000万 |
所得の上限(年収) | 3000万 | 2000万 |
改正点1:控除率変更
今までのローン控除は住宅ローン残高の1%が最長13年間所得税等から還付されるというものでしたが、これが0.7%に変更をされました。
例えば年末のローン残高が3000万だった場合、今までは30万だったのが今回の改正では21万になってしまうということです。(厳密には物件や対象者によって異なります。)
こうして見ると今回の改正は結構な差を生むと感じますよね。これはあくまで所得税の還付であり所得税だけで控除しきれない場合は、住民税からも控除が受けられます。
・・・しかし、実を言うと所得税の還付という部分がミソとなっており、年収が低い方は所得税も低くなりますから年収の低い方であれば今回の改正では実際の控除額が変わらないということもでてきます。そもそも1%控除の上限額に達することができないという意味でです。
具体的には新築戸建て購入者で年収700万程の方が3000万円の物件を購入した場合などは一般論で言うと限度額に達することがないので0.7%でも1%でも大差ありません。
この点は非常にややこしいのですが、今回の改正では富裕層や下記の改正点に該当しない方などが大きく影響をうけるだけで実はほとんどの人にとっては現行と大きく変わらないことが多いのです。
改正点2:新築13年・中古住宅の控除期間が10年に
今回の改正では新築戸建の控除期間は13年・0.7%の控除になり、中古住宅においては10年・0.7%の控除となりました。
そのため、中古住宅の購入を検討される方にとっては控除期間・控除率のいずれも改悪となっていますので2021年のローン控除よりも損をする可能性が高いです。
再利用という概念から中古住宅はエコやSDGSとの相性が良い国の政策に合致したものでありながらローン控除の部分では一番大きく改悪をされてしまったのです。
なぜこんなことが起きるのかと言うと経済規模が大きいハウスメーカー業界を一段と盛り上げるためでしょう。中古住宅の場合は主に不動産業者が個人間の仲介をして必要であればリフォーム業者にリフォームを依頼するくらいしかお金が動きませんが、新築の場合は前述したように何十万もの部材が動き多くの人間が関わることからお金の流れがまるで違います。
おそらくはこの部分が冷え込むことで日本経済が落ち込むことを政府は懸念したのかもしれません。
ちなみに中古住宅の中でも買取再販と言われる不動産業者が個人より購入し自ら売主としてフルリフォームを加えて新築同様の状態で市場に販売する物件については新築と同様の13年での控除期間となります。
改正点3:住宅の性能により変わる限度額
今回の改正で実は一番大きな部分かつ複雑な箇所となります。今までローン控除の対象となる借入限度額が一般の住宅は4000万円、長期優良住宅であれば5000万円の限度額というものになっていましたが、ここがより細分化されました。
新築戸建・自ら売主物件 | |
低炭素住宅・長期優良住宅 | 5000万 |
ZEH省エネ住宅 | 4500万 |
省エネ基準適合住宅 | 4000万 |
一般住宅 | 3000万 |
新築の種類によって限度額にも差が出ています。具体的には上記に該当しない一般住宅を5000万のローンを組んで購入して年末残高が4700万円だったとしても対象となる限度額は3000万円分(=21万)までということになります。
そのため、住宅ローン控除の恩恵を最大で享受したいという場合は性能を高めた注文住宅などを検討すると大きな恩恵を受けることができます。反対に土地の値段が100㎡4000万など高いエリアで上記のいずれも該当がない家を購入すると住宅ローン控除を最大限に生かせないというデメリットもありますね。
また、長期優良住宅は大きな優遇を受けられていますが維持管理を計画的に行わないと認定を解除されるなど手間もかかることやそもそも高コストをかけて必要以上のスペックになってしまうと感じてしまう方もいるはずなので一概にローン控除から住宅性能を考えるというのはあまりおすすめできません。
ちなみに中古住宅においても住宅性能によって限度額の差が出ます。
長期優良住宅・低炭素住宅・ZEH・省エネ住宅 | 3000万円 |
一般住宅 | 2000万円 |
改正点4:所得上限の変更
今までは所得の上限が3000万円だったものが今回の改正で2000万円に変更となりました。この部分に関してはそもそも人口の数%と言われる高所得者に対しての変更ですから多くの人にとっては関係のない話となるでしょう。