土地選びをする上で大切なことは、良い土地の勉強をするよりも買ってはいけない土地の条件について知識を深めることです。
買っていけない土地は一見魅力的に見えても、実は後々になって様々なトラブルを生むなど怖い要素を含んでいるので危険。しかし、事前に知っておくだけでそうした危険を回避することができます。
今回は、注文住宅を検討する方向けに買ってはいけない土地についての網羅的な情報を解説します。
買ってはいけない土地の条件とは?
土地は住宅を建築する際に、その形状や周辺環境によって時として様々な問題が発生します。そして買ってはいけない土地というのは、ずばり後々に費用が大幅にあがる土地と将来的に生活環境を脅かす要素を含んだ土地の2点が挙げられるでしょう。
あくまで程度による問題ではありますが、特にコスト面では土地価格自体は安いものの○○が必要で1000万近い費用増となってしまった・・・なんてことも本当に起こりうるので、安い土地が市場に出ている場合は何かしらの理由があると考えておくことが大切かもしれません。
本記事では買ってはいけないと言われる土地の代表的なものを元ハウスメーカー営業・現役宅地建物取引士がお話しします。
購入時に後悔?費用が上がる土地
前述した通り、土地は様々な問題含んでいる可能性があるので、図面やポータルサイトに載っている金額(販売価格)が安かったとしても、いざ住宅を建てるとなる時にその土地の特性で追加費用が掛かるケースというものが多々あります。
土地によってなぜ費用が上がってしまうのかというとそれは、家建てるため必要な環境を作る工事費が含まれていないためです。ここでは、後々の費用が上がる土地について解説していきます。
➀上水道の引き込みが前面にない土地
水道は生活をする上で絶対に必要な設備ですが前面道路に水道の本管が通っていない場合、遠方から宅地内へ引き込みを行う必要があるので費用が大幅に上がります。
一般的には前面道路の本管から宅地へ引き込む際は本管までの距離や深さによって金額が変わりますが費用は20~50万の範囲に収まるケースが大半です。
しかし、本管が極端に離れている場合はそれだけ工事費が掛かることになるので時としては数百万などの高額な工事費用になることがあります。また、別のケースとしては宅地内に水道管の引き込みがあっても他人地を経由しているなどの場合は引き直しが必要となるので追加で費用が掛かる事があります。
必ずハウスメーカーの担当者に前面道路に水道管が通っているか確認をしましょう。また、引き込み費用は物件や施工会社によって異なるので費用がいくらくらいになるか概算でも良いので事前に確認しましょう。
②地盤改良の有無を知る
土地を購入して家を建てる際には、事前にその土地の地盤の固さを調査して必要であれば地盤改良を行います。この地盤調査についてやっかいなのが、こちらは土地の契約後でないと調査後の地盤改良が必要かどうかわからない点です。
これは購入前に知ることが出来ない項目でありながら、仮に地盤改良が必要と判断された場合は100~200万ほどの追加費用が掛かるので可能であれば避けたい項目と言えます。
地盤の固さを知るには過去に対象地がどういった土地だったのかを知るのが大切です。例えば、地区に池や沼など水を連想させる名前がついている場合は過去にそうした水系が存在していたことが多く地盤も緩い場合が多いです。反対に山や台などの高台を連想させる地名であれば地盤が固く地盤改良を必要としない場合もあるなど、土地の過去を知ると地盤改良を避けられる可能性が高まります。
③やり替えが必要な擁壁のある土地
坂道や高台と言った高低差のあるところによくある擁壁ですがこちらも注意が必要です。既に存在する擁壁の中には、現行の法律に適合をしていなく安全性の観点からやり替えの指導が行政よりなされる可能性があります。
仮に擁壁のやり替えが必要と判断された場合、擁壁の解体から土地の造成、新しい擁壁の設置など場合によっては1000万単位の費用が追加で掛かるケースがあり、これらの費用は買主が負担することが一般的です。
特にこうした擁壁有の土地については販売価格が安いことが多く、時には魅力的に感じるかもしれませんが建物を建てるための工事コストが爆増する要因になるので総費用とみると割安とならないことが多いです。
ちなみに、現在ある擁壁が問題ないとしても一般的なコンクリート擁壁や間知ブロック擁壁の耐用年数は30~50年と言われているので後々に改修工事の費用が掛かることや売却時に擁壁が傷んでいると査定額が安くなるなどのデメリットもあり、管理の側面からも宅造法によって擁壁の所有者となる者は擁壁の安全管理が義務づけられます。
仮に管理義務を怠り擁壁が崩れるなどの実害が発生した場合は損害賠償の対象となり得るものでもあるので擁壁のある土地は数ある買っちゃ行けない土地の中でも特に注意を払う必要があるでしょう。
担当者に法律や行政の定める要件を満たした擁壁なのかを事前に確認します。また、建物を建てる上での追加コストがいくら掛かるかを事前に確認するのが理想で、可能であればハウスメーカーであれば設計士を紹介してもらい直接確認するのが望ましい。ちなみに既存のものが玉石や古いRC擁壁の場合は建築の許可が下りないケースが多いです。
④高低差のある土地
前述の擁壁と関連している部分もありますが、隣地や前面道路と比べて本地が高い・低いという土地についても注意が必要です。このケースでは注文建築においては安全性の側面から行政より建築面積の制限を掛けられたり前述した擁壁工事を必要する場合があります。
高低差については状況により様々な措置が下されるケースがあり一概には言えませんが、例えば本地が隣地より低い場合に安全性の担保として斜面から一定距離建物を離して建築をしたり、隣地の擁壁が崩れても安全を守れるよう防護壁を追加で作るなど意図せぬ費用が発生する可能性があります。
逆に本地が隣地より高い場合においては、建物の加重が擁壁に影響を与えないように擁壁に土圧を掛ける深基礎工法等の措置が必要となることがあり200~300円のコスト増が見込まれることもあります。
また、高低差が1m以内など大きな差がなくても場合によっては高額な費用が掛かることもありますし、目視でわかるほど水が溜まりやすい低い土地であれば排水処理や盛土によって追加の費用が掛かる場合もあります。
高低差が現地で確認して何mあるのか?擁壁がある場合所有者は誰なのかを確認することで追加工事の費用が見えてくるので担当営業に確認してもらいましょう。高低差については工事費用の見積もりがでるまで土地の購入はしない方が吉です。
⑤市街化調整区域の土地
市街化調整区域の中には11号該当地など住宅の建築ができるエリアが存在し販売価格も安いことが多いですが、住宅が少ないエリアのためインフラを整える際に思いもよらない費用が掛かるケースもあります。
また、積極的な開発は望めない地域になるためスーパーなどの生活施設が近隣にない場合もあることに加え、住宅ローンの融資が受けれない場合もあります。その代わり固定資産税が安いなどのメリットもありますが、調整区域は総合的な目線で考えることも必要です。
ライフライン整備費用を担当から確認した上で購入を検討しましょう。調整区域の中には実は設備が整っていながら割安に売られている物件もあったりするので自分が何を優先するのか明確にした上で購入に踏み切ることがおすすめです。
その他費用増の可能性がある土地
買ってはいけない土地とまではいきませんが、ここでは細かい費用増が見込まれる土地の特徴について解説をします。特に下記に挙げる特徴の中には注文住宅建築を行うための工事費として費用かかるので中には契約直前や担当営業の確認不足などにより土地契約後に発覚する可能性もある項目です。
狭小地や三角など不整形な土地
建物を建てる上で土地面積が狭い狭小地や三角の土地には注意が必要です。多くのハウスメーカーでは設計を行う上で狭小地や三角の土地であると出隅入隅が増えることによって建築費が上がります。メーカーにより異なりますが一定の角が増えるごとに2~6万などのコストアップとなることがあるので極端に狭い土地など設計が難しい土地は費用が上がることを頭に入れておきましょう。
井戸のある土地
都心部ではあまり見かけなくなった井戸のある土地ですが、新築工事によって埋め戻しを行うことがあります。埋め戻し費用については10~20万程の費用が掛かり、更には井戸がある土地は地下に水脈が流れている関係で地盤改良の可能性も高く、通常より多めの金額を見ておく必要があります。
浄化槽エリアの土地
排水設備が整っていないエリアでは浄化槽の設置を必要としますが、浄化槽について設置費用だけで何人槽によりますが50~100万程の費用が掛かります。また、浄化槽は定期的なメンテナンスも掛かり年間にすると1~5万のランニングコストが発生します。もし気になる土地の前面道路にマンホールない場合は浄化槽の可能性が高く費用増を見込む必要があります。
電柱の有無
対象地と最寄りの電柱の距離が離れている場合、支線を支えるために中継ポールを立てる必要があります。費用としては20~40万程掛かるものであり、敷地の通路部分が長い旗竿地などの場合は注意が必要です。
将来の安全を害す可能性のある土地
前項では思わぬ費用増が発生する土地の紹介となりましたが、ここでは費用増は発生する可能性はもちろん、住生活において安全を害す可能性のある土地についての解説です。
➀(隣人トラブル)境界が不明確な土地
検討をしている土地に境界標が存在するか、また確定測量の取得は可能か?この点は土地を購入するうえで非常に大切な部分です。ちなみに注文住宅を建てるため建築確認申請を行う際は現況測量でも可能でありますが、売主が所有権を移転する前に行う測量を拒むような場合は費用面もしくは境界や隣人に関するトラブルがある可能性があります。
一般的には境界が曖昧な場合は売主に確定してもらうのが基本であり、これらを拒否する場合は何か問題があると考えるのが普通です。仮に費用面について問題を感じている場合であっても手付け金の充当費用を測量費に充てて貰うなど解決策はあるので担当者と綿密な打ち合わせを行いましょう。
なぜ測量行わないのか理由を担当に聞きましょう。隣人と境界で揉めていたり、相隣関係で何か問題があることが発覚した場合は将来長く住むことを考えると好ましくないかもしれません。なお、費用面に関する問題であれば前述した手付け金の充当や売買価格の交渉で折り合いをつけることも考えられます。
②越境のある土地
購入を検討する敷地の現地を見学する際には必ず確認する項目です。具体的には下記のような部分を注視して見ましょう。
- 樹木の枝や葉などが越境していないか?
- ブロック塀はどちらの所有物なのか?
- 隣地の庇やベランダなどの越境がないか?
越境に関しては地面・空中・地中と様々な範囲で起こりうる可能性があります。特に樹木については現状で問題がなくても境界間際に竹などが生えていると後々に越境するリスクもあります。
また、地中に通っている水道管などの配管が他人地を越境しているケースなどもあるのでこうした見えない部分にも越境のリスクがあります。
樹木の越境のついては隣地と協議が行える環境にあるのか?庇などの建築物に関しては撤去もしくは建替え時に撤去するなどの約定書が交わせるか事前に確認することが大切です。地中の越境については汚水升や浸透升を見ることで気づくケースもありますが担当営業に水道庁舎などで確認をしてもらいましょう。
③43条但し書き道路
但し書き道路とは建築基準法上の道路ではないものの建築審査会の許可を受けることで建築を認められる道路(通路)のことを指します。
説明をすると長くなるので割愛しますが、世の中には道路に見えるものでも正確には個人が所有する土地を分け与えて通路としている所があり、それらは建物を建てる上で認められた「道路」ではないことがあるのです。
こうした但し書き道路隣接の土地は販売価格が非常に安いので一見すると非常に魅力的に見えます。しかし、建物を建てる目的で土地を購入すると様々な条件が付けられるので総費用で見ると結局高くついてしまったなんてこともありえます。
中でも、但し書き道路の物件は再建築の許可をその都度取得する必要があるので、売却時に次の購入者が建物を建てられるとは限らない=再建築の許可が取れない場合土地が売れなくなるなどのリスクもあるわけです。
また、建基法上の道路でないことからそもそも銀行から担保評価を得られず住宅ローンの融資が下りないケースもあります。但し書き道路は物件ごとに様々な条件が付されるので一概に言えないからこそ多くのリスクが潜んでいる土地と言えるのです。
検討している土地が既に再建築の許可を受けている土地なのかを担当者に確認しましょう。また建築に際してどのような条件が付くのか?その条件を満たすために掛かる必要費用はどのようなものがあるのか契約前に確認するようにしましょう。
④土壌汚染の可能性がある土地
有害な物質が土壌に浸透している土地は安全面の観点から避けるのが無難です。特にお子様のいる家庭であれば誤飲の可能性もあり健康被害についても未知数の部分があるのでとても怖い存在と言えるのではないでしょうか。
しかしながら、土壌汚染があるかは目視で判断することが難しく土壌汚染の調査がされていないまま土地の取引が進むこともあるので、場合によっては契約後数年が経過して初めて土壌汚染が発覚するなどのケースも実際にあります。
ちなみに土壌汚染の危険性は過去その土地にどのような建築物が存在したのかを知ることで推測をすることができます。
- 工場
- クリーニング店
- ガソリンスタンド
- 研究施設
- 産業廃棄物の処理場など
ちなみに特定施設の廃止や3000㎡を越える土地の区画形質変更を行う場合は土壌汚染調査が義務づけられており、調査を義務づけられていない土地に関してはそのまま販売をされていることが大半なのですが、過去の建築物や施設で何の問題もなかった土地が土壌汚染をされているケースもあります。
登記簿謄本取得・今昔マップの活用によって過去の土地状況について知ることができます。上記に該当する物件である場合は調査結果が存在するのか確認をとりましょう。
⑤交通量の多い土地
お子様がいる家庭であれば気をつけるべきポイントでこちらを重視して土地探しをされている方も多いのではないでしょうか。
前面道路が幅員の広い道路であると交通量は多くなりますが、お子様のことを考える場合は学区の小学校までの登下校ルートの確認もしておきましょう。歩道にガードレールが整備されているのかや見通しの悪い交差点がないかなどを確認することで後々の安全上のリスクを大きく軽減できます。
また、細かい部分で言いますと物件がカーブに接している所などは車の追突などのリスクもあるので前面道路の環境からどんなリスクがあるのかをしっかり吟味した上で土地選びをすることも大切です。
実際に現地に足を運びその土地が持つ危険性について予測をしましょう。
⑥災害の危険性がある土地
現在は土地契約前に行う重要事項説明においてハザードマップの解説が義務となっておりますが、災害の危険性が高い土地については実務上で最も多くのお客様が感心を寄せる部分でした。
具体的には洪水や土砂災害、液状化危険性など・・・土地の所在によって様々なリスクがあり、特に昨今では異常気象の多発により先々でハザードマップによる被害の想定が実際に起こることも考えられます。
【市町村 ハザードマップ】でネット検索をかけると大半の市町村でハザードマップの閲覧ができます。なお、地域によっては大半のエリアで何かしらのハザードマップに該当している場合もあるのでそうした土地であれば、水災保険など保険によって災害に対するリスクヘッジを行うことも有効です。
自分が納得した上で土地を買う
いかがだったでしょうか。土地の購入時には様々な要因からなるリスクが潜んでいるので慎重に判断する姿勢が大切と言えます。
しかしながら、一点申し上げますと土地というのは何かしらの問題を抱えているケースの方が多いので妥協点を見つけるのも時には必要だったりします。特に今回挙げた内容に一つも該当がない土地というのは誰もが欲しがるような人気の土地であり、それは土地の価格にも反映されます。
特にハザードマップについては河川が多いことから本当に多くの土地で該当が見られるので、これらを全て避けるとなると選べる土地はどんどん限られていきます。
そのため、限られた予算内で土地を買うと言うことであれば対応策を考えた上で購入に踏み切ることもまた大切なのかもしれません。