市街化調整区域の土地は倉庫を建築する上で非常に多くのメリットがあります。
- インターチェンジが近い
- 近隣に住居がなく音や臭気に寛容
- 土地が安い
- 広大な土地が取得できる可能性が高い
現在では市街化区域に限定すると周辺に住宅や建築物が密集していて希望のエリアで土地を探すのにも一苦労しますし、土地の坪単価も高騰していることから予算的にも厳しいという声をよく聞きます。
また、倉庫を使う業種はトラックの搬出入が多いことから音が問題となりやすく、近隣住民への配慮が必須となるので住宅の少ない調整区域のエリアで建築をしたいという事業者の方はとても多いのではないでしょうか。
先行投資を抑えながら倉庫ビジネスに適した環境を備えられる市街化調整区域の土地ですが、調整区域の土地は原則として建物の建築ができないエリアです。
しかし、原則あるところに例外あり。今回は市街化調整区域で倉庫業の土地を探す際に確認するべきポイントについて解説します。
市街化調整区域で建築できる倉庫
筆者の住まう埼玉県では農園が広がる土地にポツンと大きな倉庫が建っていることが多いのですが、こうした倉庫の大半は農業用倉庫としての利用となっており一般的には営業用倉庫としては利用することができない倉庫です。
そのため、検討しているエリアに倉庫が建っていたとしてもそれだけで建築できるということにはならないため注意が必要です。
市街化調整区域は市街化の抑制と同時に農業を促進する目的があるため、こうした農業用倉庫は行政の視点から見ても理に適っているものであるので開発許可を不要としていたり、大規模なものであっても許可がおりやすいのです。
調整区域で倉庫を建てられるエリア
農業に関連していない場合の倉庫はなかなか建てることができない市街化調整区域ですが、建築や営業を行ううえでポイントになるのが市町村による特別な指定など開発許可が受けられるエリアであるのかという部分です。
これはどういうことかと言うと、原則として建築ができない調整区域の中でも市町村が企業の誘致や地域の活性化を目的として、条件に適合するようであれば特別に開発許可をしているエリアが存在する場合もあるのです。
インターチェンジ付近の産業団地の指定
出典:所沢市産業団地の創出
市街化調整区域であっても産業団地の指定を受けているエリアであれば倉庫の開発ができる可能性があります。
上述の図は所沢市の土地利用推進エリアですが、各市町村では調整区域を守ると同時に産業の発展として土地の有効活用も目指しており、調整区域であってもそうした産業団地のエリアに指定されれば倉庫を建てることができます。
特に倉庫業は寄託など荷物を預かる保管する=車移動による交通の便が良いエリアが優先的に選ばれる傾向にありますが、自治体についてもそうした現状をよく理解しており、インターチェンジ付近であれば市街化調整区域であっても倉庫の建築が認められるケースがあります。
もちろん、倉庫の建築にあたり業種や用途、他の条例の確認を踏まえた個別の判断となることが多いので詳細な調査は必要としますが、インターチェンジ付近で現に倉庫が数多く建ち並ぶようであれば高い確率で建築が可能となるでしょう。
ちなみに埼玉県であれば東京を含める都心部までのアクセスも申し分なく、インターチェンジも関越道から圏央道、東北自動車道など多岐にわたりこれらインターチェンジの周辺であれば広大な土地を取得して小規模から大規模まであらゆる用途の倉庫を建築できる可能性があります。
ちなみに、希望のエリア等ご相談があれば建築から既存倉庫の提案まで専門に行っておりますので承ります。
特別な許可により建築ができるエリア
市街化調整区域の中でも前面道路の幅員が広いなど場合によっては産業団地の指定を受けていないエリアでも建築ができる可能性はあります。(とても低いですが)
具体的には、調整区域の中でポツンと農業用倉庫・特積み倉庫以外の倉庫が建っている場合は何かしらの許可制度や開発指導課の事前相談を用いて建築にこぎ着けたケースがあるので周辺のエリアが自身の業態・用途による倉庫建築ができるのか調べる価値はあります。
こうした部分は不動産の中でも倉庫専門で行っている業者でないとそもそも対応をしてもらえないケースもありますが、可能性が0ではないなら調査の価値はありますし、何より坪単価も市街化区域に比べ大きく抑えられる可能性もあります。
調整区域で倉庫を建てる場合の流れ
市街化調整区域で倉庫を建築にするにあたって仮に建築が可能なエリアとなっていた場合でも、もう一点大切なことがあります。それは肝心の土地が販売されているのか?という点です。
結論から申し上げますと、100坪の小規模なものから10000坪と言った広大な土地まで希望があったとしてもその時に都合良く土地が出ていることはまずありません。
当然ながら調整区域は本来住宅を含める建築物が建てられる土地ではありませんから、流動性は非常に低く待っていても出てこないなんてことも至って普通のことだったりします。
そのため、購入意思がある場合における現実的な流れとしては倉庫業に強い不動産業者に予め希望を伝えておく、もしくは地上げを依頼するなどの方法によって土地の取得を目指すことになります。
例えば、調整区域の倉庫用地などは仮に売却の話があったとしても、不動産業者がその条件に合うクライアントのリストを持っていることが多いのでそこに提案を行って市場に出る間もなく成約となることがよくあります。
そうしたことからある意味希少性のある土地ともなる調整区域の用地ですが、具体的な予算やエリアの指定などがあれば不動産業者に依頼することで、業者側はその土地の所有者に直接売却の交渉に向かうこともできるので希望エリアで購入できる可能性はあがるわけです。
もちろん、坪数によって交渉する所有者が増え失敗に終わることも多々ありますが、土地の取得については待っていてもなかなか出てこないことから本格的に検討をしているのであれば倉庫業に強い不動産業者に地上げの依頼をしてみることを検討しましょう。
市街化区域で倉庫を建てられるエリア
市街化調整区域での倉庫建築は多くの場合で例外や特例を使って建築を行うため、時期やエリアによってはそもそも建てられるエリアが存在しないというケースもあります。
そうした場合は、許可制度が明示化されている市街化区域での土地探しや既存倉庫の賃貸などを検討していくわけですが、基本的には下記の表にある準住居地域、準工業地域、工業地域、工業専用地域での物件探しがメインとなります。
出典:東京都都市整備局より一部抜粋
図は東京都都市整備局のものですが、こうした図表と共に各市町村で都市計画図を取得することによってどこがどんなエリアになっているのかを確認できるので倉庫が建築できるエリアというのが市街化区域であれば一目でわかります。
市街化区域と調整区域の坪単価
場合によっては現れることのない調整区域の倉庫用地ですが、それでも市街化区域と調整区域で掛かる費用は大きく変わるので会社によっては調整区域で建てられる土地の地上げを気長に待つということもあると思いますし、反対にすぐに事業を開始したい場合は高値でも市街化区域で土地を購入するという選択肢もあると思います。
どこに建てるか(借りるか)という部分は各社の事情に合わせて動く必要がありますが、調整区域は市街化に比べ坪単価にすると1~3万ほど安いケースが多いので総費用で見ると大きな金額の違いがでます。
調整区域で倉庫を建てたい・借りたいという場合はまず第一にその地域に詳しい倉庫に特化した不動産を探し相談をしましょう。