巷では、注文住宅に比べ安価な建売住宅は欠陥が多いと言われますが、果たしてそれは本当なのか?
今回は、建売住宅の欠陥事例や建売住宅の購入にあたり事前に欠陥を見抜く内見時に確認したいポイントについての解説です。
新築住宅の欠陥割合は意外と高い?
出典:国交省
はじめに、注文住宅も建売住宅も扱っていた元仲介兼ハウスメーカー出身の筆者から言わせてもらいますと、新築の欠陥は注文でも起こりうるものであり、体感的には建売の方が建築時から施主が細かな確認ができない分、欠陥が起きやすい印象にあります。
上記表は国交省が公表している新築住宅における電話相談で多い不具合事象をまとめたものです。2015年では新築住宅でありながら18,786件もの何らかのトラブルによる相談があるそうで、これを多いと見るか少ないと見るかは個々で別れるかもしれません。
ちなみに、2015年の新築住宅着工戸数(戸建)は住宅着工統計によると496,809戸となりこれらを割合で見ると3.8%の住宅が何らかの不都合があると言えそうです。
もちろん、それぞれの統計は時期や建物が一致しないので正確な数値とは言えませんし、電話相談がそもそも本当の欠陥なのかを知ることもできないのであくまで参考値となりますが、体感上でも建売の場合は5%くらいに何かしら施工不良や欠陥があるかなと言ったところです。
ちなみに新築住宅の不具合で多い相談は上記電話相談によると以下の割合となります。
ひび割れ | 19% | 外壁、基礎で相談が多い |
雨漏り | 16% | 屋根、外壁 |
はがれ | 11% | 外壁、屋根 |
性能不足 | 11% | 設備関係 |
変形 | 10% | 床、開口部、建具類 |
雨漏りなどは発生した時点で明確な欠陥と言えますが、ひび割れはmm数で欠陥かの可否が別れますし、剥がれも何かがぶつかったなど外的な要因も考えられるので欠陥判定は難しいところです。
しかし、表にある通り欠陥が実際に発生するリスクがあるのもまた事実なのです。
しかし、建売の場合は完成物件が多く、見ることである程度の欠陥を回避することもできます。それに現在では、建売と言えど長期優良住宅の認定やZEH基準の断熱性を備えた物件もあるので、欠陥のリスクがなければ先々に渡って快適に過ごすこともできるでしょう。
新築は8割欠陥記事は本当なのか?
ネット検索をすると「新築住宅の8割は欠陥」という記事を見かけます。しかし、これは手放しで賛同できませんし、欠陥の認識が違うのだと思っています。
なぜなら実際に引き渡した方の大半から「欠陥がおきた!」と連絡がくることはもちろんなく、現在は品確法によって売主は10年間は構造上主要な部分と雨水等の侵入を防止する部分などには欠陥が起きた場合に保証しなければなりませんし、実際にそうした不足の事態に備えて供託しなければならないからです。(住宅瑕疵担保履行法)
日本の建築基準法は世界でも指折りに厳しいと言われ、+αにこうした売主の担保責任が負担されるなかで建売業者はそんな無責任なことができるでしょうか。欠陥の補修費は安くはないのでそんないい加減な会社があればすぐに倒産しているはずです。
もっとも、施工をするのは下請けの大工さんなどの事情もあって時には弁明のしようがない欠陥を見かけることもありますが、当たり前のように欠陥住宅を作っているということは考えづらいですよね。
ただ、割と現場では釘の打ち忘れなどはよくある話で、この「8割欠陥」の記事を書いているのは住宅の検査をして利益を出すインスペクションの会社ということで、通常よりも施主様からお金を頂いているぶんかなり厳しい検査をされているのだと思います。
そのため、どうしても心配という方はこうしたインスペクション(建物の検査)をお願いする、もしくはローコストの注文住宅を検討するなどで安心を買うというのも選択肢に入ると思います。
ちなみに、タウンライフという一括資料請求サイトを使えばローコスト注文住宅メーカーだけの資料を取り寄せるなんてこともできるので便利です。
欠陥は職人と現場監督双方の能力不足が原因
そもそも欠陥住宅はどのように生まれるのというと、これは実際に建物を作り設備を備え付ける大工さんや職人と、職人の作業工程をしっかり把握し修正箇所を指摘できる現場監督の双方が経験不足であったり、技術不足であると欠陥はおきるのです。
意外かもしれませんが、標準的な一軒家となる100㎡の建物自体は大工さんが1~2人で作り、断熱施工や電気系統などそれぞれの職人が建物に必要な設備を付帯していきます。
職人がミスや施工不良をしても現場監督が気づかず次の工程に進んでしまうと内容によっては大きな欠陥が起きます。ちなみに建売住宅では飯田グループなどの大手パワービルダー系と地元の工務店に分かれることが多いですがそれぞれの特徴を挙げるとすると以下のような内容になります。
大手パワービルダーの建売 | 現場監督が管理する棟数が多い
品質にガイドラインがある 作業工程がマニュアル化されている |
工務店の建売 | 現場監督が管理する棟数が少ない
品質の基準が大手に比べ曖昧なことがある 土地に対し柔軟な対応をすることも |
大手パワービルダーの場合は、毎月○棟の着工を目指すなどルール的なもの決められている場合があり、現場監督が管理する物件が工務店よりも多い傾向にあります。
これがどういう意味かと言うと現場監督や職人が忙しくなる分、施工ミスを見逃しやすくなるリスクがあるということです。
ただし、現在では建売と言えど工場で製造された合板を利用するパネル工法など職人ごとの品質差が出づらい工法も使われることもありますし、建築をする土地も整形地であることを基本とし建物の間取りも安定しているのでミス自体は起きづらい設計になっています。
そして何より世界で一番厳しいと言われる日本の建築基準法のもとで大手である飯田グループなどはコンプライアンスや法律遵守を徹底しています。
対して、工務店の場合は大手ビルダーが扱わないような不整形地でも建物を作るケースがあり構造計算や施工が複雑になるケースがあり、そこからミスを誘発するリスクがあるとも言えるでしょう。
ネットでは工務店は腕のいい大工がやってくれると評判のようですが、実務に携わる身からしますと地場工務店の建売でも施工不良を何度か見ているので、一概に工務店とパワービルダーのどちらが欠陥リスクが少ないかは決められないかと思います。
内見時にあると便利な道具
内見をする際は、可能であればいくつかの道具を持参して臨むことがおすすめです。下記の道具は優秀な営業マンであれば用意していることもありますが、大半のお客様は目視や立地で物件を選ぶため道具を持参しない営業マンが多いのもまた事実。
何千万とする高額な買物をするわけですから、抜かりなく出来る限りのことはしていこうというのが私の考えです。
水平器
物件の床が平らになっているのか?壁がまっすぐ伸びているのか?水平器があれば簡易的にチェックすることができます。床でビー玉が転がっている動画などを見たことがある人もいるかもしれませんが、水平器があれば目視でわからなくても施工時の段階で水平に保たれているかは知ることができます。特に盛土や切土をしている元々が坂になっているような土地に建っている住宅の場合だと必ずチェックしておくべきです。
スケール・巻き尺
10mなど長いものがおすすめです。これをどう使うのかと言うと、各居室や壁の対角の長さを測ることでその部屋が歪んでいるかどうかがわかります。また、スケールはダイニングテーブルやベッドなど家具のレイアウトなどを決める際にも有用なもので、内見時に持っていくとベッドが居室におけるかなど事前に判断できます。
懐中電灯
懐中電灯は後述する見るべき部分について、暗い箇所があるのでそれらをチェックする際に使用します。
欠陥を防ぐ内見時のチェックポイント
ここからは実際に内見を行う際に見ておきたいポイントについての解説です。内見は不動産業者立ち会いのもとで行われると思いますが、中にはそんな隅々まで見なくても・・・なんてことを言われるかもしれません。
しかし、購入するのはあなた自身なので妥協をする必要はありません。建売でも素晴らしい物件はたくさんありますので是非見るべき所は見るようにしましょう。
床下点検口
床下は主にキッチンの床下収納庫から覗くことができます。中を覗くとコンクリに給水管などが並んだ殺風景な景色が見られますが、床下は住宅の通気性を知る上で重要な部分です。
見るべきポイントについては、基礎と床下の間に光が差し込む部分が有るか否かと床下内に湿気が溜まっていないかの2点です。
基本的に床下は地面から昇る湿気を外に排出するために隙間があります。もし隙間がないと、湿気が外に逃げることができずカビの温床となり床がギシギシしたり、歪んだりすることがあります。
ちなみになぜ、隙間のない物件があるのかと言うと経験のない職人がモルタルで隙間を塞いでしまうことがあるためです。もちろん、湿気が多いと床下が腐る原因となり建物自体の耐用年数にも大きな差が出てくることになります。
また、床下はその他にも断熱材が重力によって落下していたり、結露によって水が溜まる場合などもあります。こうした物件は施工時の見えない部分でも手抜きをされているリスクがあり得るため床下については必ず確認したい部分と言えます。
天井点検口のチェック
建売については天井点検口がついていないケースもあります。(注文住宅でもついてない場合があります)
そのため、天井点検口についてはその有無を確認することが大切です。中を確認できれば理想ですが、実際はビスなどでしっかりと留められており、開けれても断熱材が詰まっているなどの理由で天井点検口については内見時では見れない・売主が見させてくれないことがあります。
天井点検口があれば、雨漏りなどが発生した場合に原因を究明しやすくなるなど、その存在があることで安心できますが、どうしても天井点検口を見たいという場合は購入申込書を売主へ出して引渡し前の内覧で確認しましょう。
おいおい買ってからチェックで大丈夫なの?と思われるかもしれませんが万が一、雨漏りなど建物構造に関わる瑕疵があれば「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」によって売主が保証をしてくれるので無料で補修してもらえます。
クロス・巾木のつなぎ目
クロスに傷が付いていないか?つなぎ目の間隔が大幅に開いていないか?巾木の中から釘が飛び出ていないか?など細かい部分ですが購入を決める物件であればしっかりと確認しましょう。実際に私が過去に案内した物件でも巾木から釘のようなものが飛び出た物件がありましたので割と起こりうる可能性があるかもしれません。
また、建売物件については購入者が現れるまで多くの不動産業者やお客様が入退室されますので、そうした時に傷がついてしまうこともあり引渡し前にこうした傷を見つけることができると売主に無償で直してもらえることがあります。
ドア扉の建付けをチェック
必ず各部屋にあるドアの開き具合をチェックしましょう。建物傾きや土台を支える基礎が沈むことによって引っかかりが起きるドアが稀にあるためです。
実は床のたわみや 建物の傾きが起きる場合はまず建具の開閉に現れると言われます。そのため、目視ではわからない傾きなどもドアの開閉を確認しながら行うことである程度は防げるのです。
外回りの確認
- 基礎部分のヒビ(クラック)
- 換気フードなどのヘコみ
- タイルの亀裂
外壁などの外回り部分についても目視で確認をしましょう。新品の素材を使っているだろうから安心・・・と多くの方が思いますが、足場の解体時に外壁や換気フード傷つけてそのままにしている物件なども稀にあります。
基礎のクラック(ひび割れ)については、新築の場合コンクリート打設をして固まりきらないことから多少は発生することがあります。そのため、見るべきは深さであり下記の内容に合わせて該当する場合は売主へ補修してもらえるか確認を取ると良いでしょう。
ヘアークラック(心配の必要なし) | 【幅0.3mm未満、深さ4mm未満のひび割れ】 |
構造クラック(補修が必要な可能性が高い) | 【幅0.3mm以上、深さ4mm以上のひび割れ】 |
欠陥防ぐ内見時の確認チェックリスト
高額な買物ながら欠陥が身近なリスクとして起こりうる住宅購入ですが、目に見える範囲をしっかり確認するだけでもリスクは大幅に軽減できます。ここでは内見時に見ておきたいチェックリストを作成しましたので本ページを見ながら内見をしてみてください。
外・外構部分 |
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玄関・廊下・階段 |
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リビング |
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床下収納 |
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キッチン |
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洗面・浴室 |
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居室 |
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バルコニー |
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赤字の部分は欠陥を防ぐという意味では特にしっかりと確認したい部分です。ちなみに天井点検口がない物件も多いですが、ある場合は大体が洗面・浴室・収納の周辺に設置されています。
ちなみに水洗関係については、物件に水垢が残ってしまうため契約後でないと使わせてくれない所が多いです。
人生で最も大きな買物となるわけですから、真剣に検討されている方ほど隅々まで見たいという気持ちがでますが、この辺は売主からすると他のお客様の案内もあるので常にピカピカの状態にしておきたいわけで・・・難しい部分です。
とはいえ、これだけの部分をしっかりチェックすれば大半のトラブルは防げるはずです。
最後にPRとなりますが埼玉県内であれば、新築建売物件を仲介手数料を割引きした形でご紹介できる物件もありますのでご縁を賜れましたら幸いです!是非素敵な住まいの実現を目指しましょう!