自然豊かな環境に多く、子育てなどに魅力を感じる方の多い調整区域ですが、市街化調整区域は住宅ローンを組む場合に審査が通りづらいというのは本当の話です。
しかし、一言で調整区域と言っても住宅ローンが通りやすい土地や通らない土地など、その土地が持つ特性によって内容は変わり、場合によっては問題なく通ることもあります。
今回は、市街化調整区域の土地で知っておきたい住宅ローンの知識について解説をします。
住宅ローンが通りづらい理由
なぜ市街化調整区域の土地は住宅ローンが通りづらいのかと言うと、それは物件の担保評価に原因があります。銀行は住宅ローンを貸し出すうえで抵当権を物件に付けますが、これはローン返済が滞るなど万が一の場合にその土地を売却して貸し出した資金の回収をするための手段です。
しかし、市街化調整区域は元々市街化を抑制する区域を指し原則住宅の建築はできない土地です。そのため市街化区域と比べても物件の価値(担保評価)は低くなります。
そんな土地で返済が滞った場合に抵当権を発動して売却を行っても市街化区域と比べて売却価格が安くなるので銀行はこうした担保評価の観点から住宅ローンを貸し渋るのです。
住宅ローンに関係あり?市街化調整区域の種類
土地の担保評価がどうしても低くなることからローン審査を通せないことも多い調整区域の物件ですが、現在では問題なくローンを審査を通過できるケースがあるのもまた事実です。
そして、通る・通らないの判断基準として最も大きい要素は調整区域でも建築基準法に則って住宅が建てられるのかという部分です。
ややこしい話ですが、原則住宅が建てられない調整区域の中には特例や適法によって住宅を建てられる土地もあり、そうした土地は買手の需要が見込める分、担保評価は大きく変わります。
もちろん建築の可否は、その他にも市町村や土地のその他法令による細かい内容の違いで異なり、審査の通りやすさも個々の土地で変わります。
ここではそんなややこしい調整区域の土地によくあるパターンについて解説します。そして、下記にあげる土地については後述しますが、ローン審査を通過できる可能性がある土地です。
市街化調整区域12号
市街化調整区域の販売図面を見ると【12号該当地】と記載がされているものがありますが、これはわかりやすく言うと市街化調整区域に住んでいる親族が既にいる場合、特別に親族のあなたも隣接の市街化調整区域に家を建てられるという特別な制度のことです(都市計画法第34条12号)
ざっくりの説明ですが、以下の条件を満たす人であれば12号該当地に家を建てられる可能性があるのです。
- 調整区域に20年以上居住する6親等以内の親族がいる
- 自己所有や名義の住宅を現在持っていない
- 自己が居住目的の居宅を建築
※市町村によって異なります。
結論から言うと農家の親族がいる場合は12号に該当する可能性が高いです。農家は広大な土地を必要とすることから調整区域に田畑と共に居宅を構えていることが多いからです。その他にも、調整区域が制定される以前から現在までその土地で居宅を構えている方なんかもいます。
12号は一般的に200㎡など広い土地を非常に安価な金額で買える魅力的な土地ですが、住宅ローンの通りやすさというと家を建てられる人が限られているぶん(属人性)前述の担保評価が低く審査は比較的通りづらいと言えます。
市街化調整区域11号
前述の12号が人的要素に要素によって建築が可能となる土地ですが、この11号の土地はなんと調整区域にありながら誰でも住宅を建てられる区域になります。
具体的には、市街化区域に隣接しており約50以上の建築物が連なるエリア(50戸連たん)等に該当すると開発行為が行えるというもので、わかりやすく言うと調整区域でも一定規模の人が住んでいるエリアなら家を建ててもいいという制度があったのです。(都市計画法34条11号)
・・・あったのです。と申し上げましたが、実はこの11号については調整区域の乱開発が続いてしまったために現在ではほとんどの市町村で廃止されており、この制度で新たな開発を行うことができません。(川越市は2011年の条例改正により廃止)
ただ、現在でも稀に当時許可取得を行った土地が市場に出ずこの先になって出るなどの可能性があります。非常にレアですが。
この11号についても購入は誰でもとなりますが、売却時の担保評価という側面から見ると市街化区域と比べても安くなるためローンの審査はやはり通りづらいと言えます。
既存宅地制度
既存宅地とは、昭和45年8月25日以前から現在まで住宅の建っている土地かつ地目が宅地となっていれば建替えが可能となる調整区域の土地です。(市町村により異なる)
簡単に言うと昔から住んでいる土地だから特別に建替えを認めるというもので、既存宅地についても誰でも建築が可能となります。
既存宅地については元々住宅が建っていたということから上下水や電気などのライフラインが整っていることが多く市街化調整区域の安さに加え付帯工事費用も安く済むケースが多いという人気の土地です。
ただし、最近の傾向としては既存宅地においても市町村によっては住宅が密集していないエリアであると既存宅地が認められないことがあるなど、時代や市町村の考えによって可否が分かれるケースもあります。
審査を通す最大のコツは銀行選び
上記にあげたような土地は審査が通りづらいと言われる調整区域の土地の中でも比較的審査を通過しやすい土地と言えます。しかし、ローンを通過させる上で最も大切なことは住宅ローンを貸し出す銀行選びと言えます。
住宅ローンの審査は各金融機関で大元こそ似ていますが独自に定めたルールによって審査をしています。わかりやすく言うと○○の事情があるとA銀行はそれだけで審査落ちとなるのに対し、B銀行であれば金利の引き上げなどによって受け入れをしてくれるといったものです。
では、市街化調整区域の土地ではどんな銀行が審査を通過しやすいのか?それはその地域の調整区域の事情に詳しい地方銀行や信用金庫が筆頭になるはずです。
ここからは経験を踏まえた話になりますが、調整区域の土地における住宅ローンを選ぶ上で、ネット銀行や都市銀行でも建築確認申請が降りていれば審査自体を受けてくれる所もあります。
しかし、結果的に事前審査の回答は0円回答もしくは減額融資・金利が大幅に上昇した実行金利などあまり良い条件が引き出せないことは多いです。というより審査可としていながら都市銀行やネット系は0円回答ということも経験上多いです。
特にネット銀行は金利が安いと評判があり、お客様自身で選ばれる傾向にあるのはよくわかります。しかし、ネットに記載されている金利はあくまで最優遇の金利であり、仮に審査に通過したとしても調整区域でそうした金利が適用されることはなく、他行より結果的に高い金利となるケースもあります。
対して地銀や信金は地域の事情に根付いた審査を行っているケースも多く、例えば調整区域の多い土地柄のエリアにある地銀であればそうした事情も踏まえ審査を行ってくれることがありますし、農協や労働金庫など組合員を抱える所であれば申込人の属性によって調整区域でも難なく審査が下りるケースもあります。
これは特に調整区域の中でも12号のような属人性のある土地に対して顕著に表れることでしょう。それでも信用ならないという場合はネット銀行及び地銀・信金系に住宅ローンの事前審査を出してみましょう。
結論を言うと調整区域で住宅ローンを組むうえで優先したい金融機関は以下の形になり、これはどのエリアでもおおよそ共通しているはずです。
- JA(農協)
- 労金
- 全国保証を利用する信用金庫
- フラット35
筆者の住まう埼玉県を例にして言えばJAや労金はもとより、埼玉懸信用金庫なども調整区域に対して前向きな回答が得られる傾向にあると感じています。
調整区域で住宅ローンを通す最大のコツはこうした金融機関選びにあると言っても過言ではないので、可能であれば金融機関の事情に詳しい不動産会社を経由して住宅ローンの申込みを行うのが理想です。