【地主・オーナー向け】貸倉庫の運用に掛かる経費・支出・維持費

貸倉庫や店舗物件を専門に管理・サブリースを行う筆者の企業では最近になって以下のような内容でご相談に来られる方が多くいます。

 

  • 相続で継いだ倉庫が何もわからない・・・
  • 自社用で利用していた倉庫の活用方法はないか?

 

特に相続の場合は、予め被相続人(故人)から物件の存在や運用方法を聞かされていないと何が何だかわからないのは当然の話ですよね。

 

そして、そんな倉庫を相続した方の中には運用方法がわからないから売却して現金に換えたいという方も数多くいます。しかし、それは場合によってとても損な選択となる可能性があります。

 

本記事では、そんな倉庫の運用に掛かる支出や経費についての解説を行っています。是非本記事をご覧になられた上で所有した倉庫を売却するか賃貸に出すかの判断をしてみてください。

 

倉庫の支出と収益の考える

 

個人や事業主に貸し出せるような倉庫を相続した場合に、大切なのはその倉庫の支出を計算に入れた上で収益を見込める物件なのか?という点です。

 

例えば、毎月の家賃が100万を見込める物件で年間支出が600万だったとします。そうなると年間収益にして600万となります。

 

売却の場合は、一回の売買価格で収益が途絶えてしまうわけですが、賃貸にだせばその倉庫が毎年お金を生む存在となり、所有物件でもあるのでいざとなれば売却に踏み切ることもできます。

 

単純な考え方ですが、せっかく残された財産である倉庫の収益最大化を考えた時に売却のタイミングは非常に重要なことなのです。

 

ちなみに、倉庫の場合は築年数が仮に古い場合でも専門業者にテナント誘致を頼めば借手が付く場合が多いです。

 

もちろん相続税の兼ね合いもあるため一概には言えませんが、相続のタイミングで適切な選択ができるよう税理士への相談、賃貸に出して長く収益を得たいけど借手がつくか心配な場合は倉庫業に強い不動産業者へ相談する動きが大切と言えます。

 

筆者
倉庫は需要の高い不動産なので焦って売る前に一度冷静に考えることがおすすめです。埼玉県内の倉庫であれば売却はもちろん、見込める賃料の提示や管理までお受けできます。お気軽にご相談ください。

 

貸倉庫に掛かる支出・経費

仮に倉庫を賃貸に出す場合は、大家業として収益を挙げることになるので貸倉庫は不動産投資のカテゴリに入ります。そして、肝心の支出についてですが主に下記の内容が挙げられます。

 

  • 火災・地震保険料
  • 減価償却費
  • 固定資産税
  • 不動産取得税
  • 登録免許税
  • 印紙税
  • 利子税
  • 法人事業税
  • 借入金の金利
  • 司法書士報酬
  • 仲介手数料
  • 広告費用
  • 管理費
  • 交通費
  • 通信費
  • 水道光熱費
  • 修繕費

 

項目がとても多く見えますが、物件によって全てが該当するわけではありません。ここでは特に貸倉庫で関係しやすい代表的な事例についてあげていきます。

 

保険料

 

建物を守るための火災保険と地震保険についての保険料は負担の大きい支出となりますが経費となりうるものです。ちなみに倉庫の場合は通常の火災保険よりも保険料が高くなる傾向にあります。

 

また、倉庫の場合は貸主・借主の双方が保険に入るケースがあり、貸主(オーナー)の保険は倉庫そのもの守るための保険という意味合いがあります。

 

減価償却費

 

減価償却費は建物の構造によって決まる法定耐用年数・築年数を使って計算します。ちなみに建物を取得した年度によって償却額が毎年定額になる定額法と償却費が毎年減少する定率法に分かれます。

 

倉庫であれば、用途や構造により21~47年程度になり築年数によって金額は大きく異なるでしょう。

参考:東京主税局建造物の法定耐用年数

 

税金

 

投資用不動産として購入した不動産に掛かる不動産取得税や固定資産税などの税金は経費として計上することが可能です。ただし、所得税や住民税など税金の中には経費で落とせないものもあり、個人用不動産などパターンによっては経費で落とせない場合もあるのでこの点は税理士に確認をすることになります。

 

仲介手数料

 

不動産会社を通じて倉庫の賃貸募集を行った場合は、契約時に不動産会社へ支払う仲介手数料が発生しますが賃貸の場合は経費で計上することができます。また、売買の場合であれば固定資産の取得価格をもとにするので賃貸の場合と内容が異なります。

 

管理費(管理委託費)

 

倉庫を不動産会社に管理委託している場合の費用(家賃の10%などが多い)は経費計上することが可能です。管理を不動産会社に委託している場合、具体的には家賃の集金、契約書の作成、入居テナントの募集、入居者の折衝業務を不動産会社が行っているのでそうした部分に対する手数料です。

 

修繕費

 

建物の修繕費用については経費計上できるものと経費計上できないものに分かれます。主に修繕費には長持ちさせることや価値が上がる行為については資本的支出と判断され一括で経費計上ができないケースがあります。

 

反対に、壊れた設備を元に戻す行為や定期的な設備の取り替えなどは修繕費として経費で一括計上できる場合があります。

 

実務上では倉庫の場合、原状回復を費用や倉庫内部の造作費用はテナント側が負担をし、経年劣化によって発生する外壁や雨漏りなどの建物本体の修繕はオーナー側が負担することが通例で、修繕費については毎年掛かるコストというわけではありません。

 

支出の中で特に大きいもの

 

運用をする上で、支出が家賃を上回ることがなければしばらくは賃貸として収益化し、後に売却という手段が効率的な運用と言えます。

 

そして、実務上の話をさせて頂くと、例え田舎や築年数が古くても入居者が決まる倉庫であれば収支でマイナスになることはほとんどありません。

 

ただ、気になるのが賃貸に出した場合に実際の支出はどのくらいになるのか?という部分だと思います。ずばり、支出の大部分は下記の内容が大半を占めています。

 

  • 固定資産税
  • 修繕費

 

固定資産税はいくら掛かる?

大半の市町村では年に4回に分けて納税を行う固定資産税は支出の大部分を占めるものです。ちなみに税額は土地の広さや倉庫の規模により異なり一概にいくらと言えないため下記のような方法で実際に掛かる税額を調べましょう。

 

  1. 納税通知書で確認する
  2. 固定資産課税台帳を閲覧する
  3. 固定資産評価証明書を取得する

 

➀については、所有者に届く実際の納税額が記載された明細で毎年春頃に役所から届きます。大半の方がこれを見ることで実際の税額を把握できると思います。

 

②については、役所の担当する課に登録されている課税台帳を閲覧する方法です。これは所有者・所在・価格が記載されており固定資産税納税義務者である相続人なども閲覧することができます。

 

③については、固定資産課税台帳に登録されている固定資産の評価額や所有者、所在などを証明した書類で同じく役所の担当課で請求することができます。ちなみに②と③について「固定資産税評価額」がわかるもので、そこから実際の固定資産税を計算する必要があります。

 

筆者
物件の所在地や倉庫の構造やグレードによって固定資産税は異なります。

 

先が見えない支出の修繕費

 

貸倉庫を運用する上で最も大きな支出となるのは修繕費です。アパートやマンションと同様に建物は長いことそのままにしておくと様々な所で経年劣化が起きて、定期的に修繕の必要が出てきます。

 

そして、倉庫の場合は主に下記の内容が定期的に掛かる大きな支出となります。

 

  • 屋根の葺替え
  • 外壁の修繕
  • 駐車場の整備費用

 

屋根の葺替え費用

経年劣化によりボルト部分が傷んだ屋根

 

経年劣化によりつなぎ目の補修が必要となる部分

 

貸倉庫を運用する上で最も大きなトラブルが雨漏りとなりますが、屋根は長年の雨風によってボルトが錆びてしまったり、コーキング部分が劣化するなど至る所に雨漏りのリスクがあります。

 

昨今では、程度によっていくつかの修繕方法がありますが場合によっては数百万単位の費用が掛かるケースもあります。

 

コーキングの打ち直し

費用:小

劣化した部分をコーキングで補修し隙間を埋める修繕方法です。これは応急処置的な工事の意味合いがあり費用が安いです。

 

塗装

費用:中

防水加工を施した上で塗装を行います。本来は10~15年置きに塗装を行うことで結果的に屋根を長持ちさせることができますが、実際は行っていないオーナー様も多いです。ちなみに塗装は外壁についても行うべき補修と言えます。

 

カバー工法

費用:中

既存の屋根の上に屋根を被せる方法で費用対効果が高いと言われる工法です。倉庫という強度の高い建築物だからこそできる工事ですが、カバー工法を行う場合でも数百万単位の施工費が掛かります。

 

葺替え工事

費用:大

屋根自体を取り替える工事のため、大きな費用が掛かります。

 

土地の整備

地盤沈下した駐車場部分の土地

 

貸倉庫の大半は建物と同じくらいの規模の駐車場が完備されていますが、長年車両の搬出入を続けていると地盤の弱い土地の場合沈んでくることがあります。倉庫の場合は土地が平らでないと荷物の搬出入がしづらいなどの理由からテナントに嫌悪される要因となるため定期的な修繕が必要と言えます。

 

唐突な支出を防ぐため修繕積立金を用意する

上記で行うような補修は遅かれ早かれいずれ必要となる工事です。ちなみにおおよその目安は実務上だと下記のような期間になることが多いです。

 

屋根:15~20年

外壁:15~20年

土地:テナントの使用状況による

 

これら後々に掛かる費用に備えて修繕積立金を用意しておきましょう

 

修繕積立金は毎月賃料の1割程度を積み立てておくことで後々の修繕費が捻出できます。

 

筆者
毎月家賃の2割程度を積み立てておけば固定資産税の納税及び修繕費に対して余裕を持って取り組める可能性が高いです。

 

修繕費について触れましたが、これでも倉庫は不動産投資・大家業の中でも手出しの費用が少ない傾向にあります。倉庫の場合は簡単に言うとテナントに「箱」として貸出すことになるので、オーナーが手入れするのは外側の部分で内部についてはテナント側が原状回復によって元に戻すためです。

 

ローン残債がなければ賃貸がおすすめ

結論から言いますと、倉庫はテナントさえ付けば安定した収益が見込める不動産投資の中でも優れた収益物件と言えます。

 

ただ、内容のわからないまま相続をした場合などは後々の修繕費に対応できるのかなど不安になる部分も多いと思います。そこで、賃貸か売却を考える際に一つの目安となるのがその倉庫にローン残債が残っているのか?という点です。

 

仮に残債が残っている場合であると、賃料からストックする修繕積立金や固定資産税などの支出の他に毎月の返済があります。

 

この場合であると、仮にテナントが退去された時に数ヶ月は無収入のまま返済を続けるリスクがあるので売却をするほうが精神的にも安心となるかもしれませんからね。

 

対して、返済を終えている・現金で購入した物件などは修繕費や固定資産税などの支出分だけを積み立てればよく、仮に数ヶ月空いてしまった場合でも利益を蓄えられる可能性が高いです。特に倉庫業に強い不動産業者に依頼すれば賃料の設定を間違えない限り早々にテナントは入居します。

 

倉庫の売却・賃貸は専門業者に相談しよう

倉庫という物件はアパマンなどの不動産に比べ、極端に情報が少ないのでどう運用をすればいいのかわからない方も数多くいます。

 

そして、これは不動産業者にも言えることで・・・倉庫に詳しくない不動産業者に売却の依頼をすると、相場が違っていたり、更地にしての売却を勧められるなど時としてオーナー様が損をするような提案をされるケースもあります。

 

大切な財産であるからこそ、選択は慎重にありたいものです。埼玉県内であれば倉庫の運用に関する相談を承れますのでお気軽にご相談ください。

 

筆者
状況をお伺いさせて頂いた上で賃貸での収益化や売却などご希望の方法で手続きをサポート致します。
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