注文住宅においての見積もりの項目は各社でバラつきがあります。そのため、複数社で相見積もりをしたとしても何が高くて何が安いなどの比較ができないという方も多いのではないでしょうか。
山田 さん(28歳・女性)
ネットで坪単価80万と聞いたけど実際に見積もりを取ったら総費用は全く違う金額だった。それと本体工事価格・設計管理料・工事諸経費とかは特に各社で金額が違うけど中身は何なの?
あろは さん(31歳・女性)
同じ土地に建てることを想定して相見積もりと取るとA社には地盤改良費に100万と項目があるけど、B社では記載されてなかった。この差はなに??
注文住宅の見積もりがわかりづらいor理解不能・・・これは私がハウスメーカーに勤めていた頃からお客様からよく言われていたことであり、たしかに初めて見積もりを取る方がぱっと資金計画(見積もり)を出されても理解できるはずがありません。
なぜ、各社でそうした仕様になっているのかというと、これはいくつかの理由があるのですが例えばこれは必ず発生するであろう値引き交渉を有利に進めるものだったり、各社で費用計上の仕組みが異なっていたり、そもそも法規制において明確な規制が取られていなく各社が独自の資金計画書を作成しているなどのことが挙げられると思います。
今回はそんなわかりづらい資金計画・見積もりにおいて各項目の内容や見方、そしてメーカーのぼったくりを防ぐために消費者が知っておきたい情報などを解説します。
見積もり書3つ構成
まずはじめにですが、見積書は各社でフォーマットが異なりますが、これから上げる3つの項目(A+B+C)が記載されている見積もりであれば、おおよそ総費用に近い「精度の高い見積もり書」と言えます。なぜ「おおよそ」なのかは後述します。
建物本体工事価格(A)
建物本体工事価格とは、土地や法令制限、周辺環境の影響を考慮せず純粋に希望の平米数で作った標準の建物に掛かる金額+オプションのことを指します。厳密にはこの本体工事価格に木材や断熱材と言った資材の他にキッチンなどの標準装備の設備も含まれます。ネット上で公開されている坪単価は大半がこの本体工事価格の部分を坪単価としています。しかし厳密にはこれだけで人が住む建物は作れないのです。
- 建物本体工事価格に含まれる主な項目
- 住宅の木材、屋根、壁、断熱材などの素材・基礎・キッチン・トイレなどの室内設備、設計管理料など
付帯工事・追加工事価格(B)
本体工事が純粋に建物に関する価格であればこちらはその建物を作るために必要とする追加工事、その土地やインフラの状況によって行う必要のある工事のことを指します。具体的には建てる土地の前面道路に都市ガスが通っている場合はその引き込み費用や建築資材を運ぶための運搬費用などです。こちらの付帯工事を行うことによっていわゆる人が住める建物となるのです。
- 付帯工事・追加工事に含まれる主な項目
- 上水道引き込み費用・都市ガス引き込み費用・外構工事・地盤改良費・特別運搬費・仮設工事・冷暖房工事・建築確認申請費・長期優良住宅申請費など
さて、ここで付帯工事の中に見慣れない内容のものなどが多く含まれてはいないでしょうか。この点についてはその内容と適正価格について後述しますのでご安心ください。
購入諸経費(C)
購入諸経費は購入をする際に追加で掛かる費用の計上をします。日本で家を建てる場合は法律で所有権を明確にする必要があったり、保険の加入、引っ越しなどやるべきことも多いですからね。また、家を建てるには大工さんなどの職人が動くわけで人件費も必要です。
そして、この購入諸経費はこうしたその他の経費に加え、住宅ローンを組む場合は融資系の諸経費も計上されることになります。
- 購入諸経費に含まれる主な項目
- 火災保険費用・地震保険費用・登記費用・仲介手数料・外構費用・水道加入金など
- 融資系購入諸経費(住宅ローン利用時)
- 契約印紙税・融資手数料・住宅ローン保証料・つなぎ費用など
注文住宅の見積もりは主にこの3つから構成をされていてA+B+Cが合わさり実際に人が住める状態になる総費用ということです。
しかしながら、これだけ項目があるなかで今回挙げている各項目はハウスメーカーによってバラバラなのです。具体的には設計管理料がA社では本体工事価格に含まれていたり、B社では付帯工事に含まれていたりと・・・こうした部分から複数社で相見積もりをとっても比較が難しくなっているのです。
おそらく、大半の方は費用の内訳も気になるけど一番知りたいのは各メーカーの総費用の部分だと思います。続いて下記では100%に近い精度で見積もりを出してもらう方法を解説します。
その1:見積もりを取るには建築する土地の情報を渡す
上述のように見積もりは本体工事価格・付帯工事・購入諸経費の3つが記載されている状態であればある程度信頼のおける見積もり書となります。しかし、ネットの口コミなどを見ると多くの人が最初の見積もり提示よりも契約時は費用が上がってしまったと言います。中にはオプションを追加したわけでもないのに費用が上がったという人もいます。
それはなぜかというと、大半のケースで最初の見積もり時に建築する土地の情報を渡していないor土地が決まっていない段階で見積もりの請求をしているからです。もしくは営業マンの土地に対する調査不足による追加計上なども考えられます。
土地は建築の総費用を決める上で非常に重要な要素となり、土地の内容によって建築費用は大幅に変わる可能性があるのです。ここで実際に起きた口コミをもとに具体例を見てみましょう。
APさん(33歳・女性)
建築する土地を不動産会社から購入して再度ハウスメーカーに見積もりを取ったところ、建築する土地の前面道路までに道幅が狭いところがあり作業車が入れないことがわかりました。そのため、小型運搬機を追加で投入する必要が出てきて30万ほどコスト増になりました。
UIさん(29歳・女性)
見積もり後に再度ハウスメーカーに調査へ入ってもらったところ、都市ガス管が思いのほか自宅から離れた位置にあって引き込み費用が20万追加で掛かりました。実家の建て替えだったので最初の見積もり時に教えてもらいたかったのですが、その段階から土地の調査はしないとのことでした。
この世に一つとして同じ土地は存在しないので、その土地土地によって追加費用となる項目は異なってきます。上記で上げたような都市ガス管の宅地内引き込み費用や資材の特殊運搬費用などはよくある話で、そのほかにも建築するエリアによって法令の制限により特殊な申請を必要とするところもあります。
ちなみに昨今では、タウンライフをはじめとする各社の資料請求サイトが充実しておりますが、こうした資料請求の段階からある程度正確な費用を知りたいのであればスーモなどで気になる土地の情報を調べ、備考欄などに建築予定地と入れて資料請求すると土地の条件を含めた見積もりを提示してくれるところもあります。
また、建て替えのケースにおいては既存建物の解体費を含めて見積もりを出してもらいたい場合、法務局より入手できる下記書類を提示することでより詳細な見積もり書の提示をしてもらえます。
- 建物謄本
- 土地謄本
- 公図
- 建物平面図
- 地積測量図
その2:家族構成・年収などの個人情報を開示する
資料請求や初めてハウスメーカーに来店する時点でこうした情報を開示することに気が引ける方もいるかもしれませんが、注文住宅の総費用は建物面積+オプション+土地+顧客属性が分かればほぼ完ぺきな状態の見積もりを出すことができます。
この部分は住宅ローンに関わるものであり、具体的にはあなたの職業や勤続年数、年収、更には奥様のパート収入の有無など詳しいお仕事情報が分かればおおよそ出るであろう金利や借入額、保証料、事務手数料を含めて見積もりに提示することができるからです。
もちろん、この部分は自分の家探しに対する熱度で開示するかどうかの選択になると思いますが、ここだけの話・・・この情報を開示しないと相手にもしてくれないハウスメーカーもあります。単純にハウスメーカー側からすると買えるかどうかもわからない人に対して時間を割きたくないということなのでしょうが。。。ちょっと悲しいですよね。
見積もりに記載される必須項目と費用の相場
ここからは見積もりに記載される内訳の内容や適性価格についてのお話になります。各項目の内容を知っておくことでハウスメーカーがどの部分で利益を上げているのかを知ることができます。また、高い部分を事前に知っておけば値引き交渉なども有利に進められる可能性があるので是非参考にしてみてください。
本体工事価格
インターネット上では多くのサイトがこの部分のみを坪単価として公開されていますが、前述したようにこの金額だけで家は建ちません。ちなみにこの坪単価ってハウスメーカーが公式に発表しているわけではなく、アフィリエイトサイトなどが独自に見積もりを集めて出したりしている数字なので調べてみると「○○ホームは坪単価30~80万程度」など全く参考にならない金額のブレが書いてあったりします。でもこれは仕方ないことなんです。
何せ、各ハウスメーカーではグレードの異なる様々な商品ラインナップがあり、同じ商品だとしても間取りや設計によっていくらでも金額が変わってしまうからです。例えば本体工事価格上の坪単価が安いと思っていても、自分がやりたい間取りにすると出隅入隅が増えて大きくコストアップしてしまうハウスメーカーなんかもあります。
本体工事価格を知るにはハウスメーカーより直接本体工事価格表を貰うほかなく、大切なのは標準仕様と自分がやりたい間取りにおいて何がオプションとして追加費用となるのかを教えてもらうことです。
ちなみに本体工事価格の坪単価からみる大手のハウスメーカーをカテゴライズすると以下のようなすみ分けになるので参考にしてみてください。
※各社の商品グレードによって価格は異なる場合があります。
2022年現在では、物価の高騰及びウッドショックによる影響で、軒並み各ハウスメーカーが値上げをしています。そのため、坪単価30万円台で実現できるハウスメーカーはほとんどありません。結論から言いますとこの本体工事価格の部分だけは、直接メーカーから最新の価格表を取り寄せないとわからない部分なのでタウンライフなどの資料請求サイトで価格表を一括請求するとハウスメーカーは絞りやすくなるでしょう。
追加工事・付帯工事費用の相場
追加工事はその土地や建物によって本当に様々なものが発生するため、思いがけない予算アップをしてしまう部分です。ここでは見積もりに出やすい項目について概要と相場を解説します。
購入諸経費の費用相場
諸経費は保険や登記費用、銀行関係の金額によって大きく変わる項目です。見積書に記載される主な項目は下記ですが、金融系の諸経費は銀行へ事前審査を出さないと正確な数値はわかりません。
登記費用
登記とはざっくり言うと所有権などの権利関係を法務局へ赴き登録することです。こちらは専門資格を持つ土地家屋調査士や司法書士に依頼するものであり、費用は税金+資格者への報酬となります。注文住宅における登記は主に下記があります。
登記費用については、土地から購入するのかや抵当権を設定するのかによって金額が大きく異なりますが、一般的な土地から購入して銀行ローンを借りる場合だと50~60万になるケースが多いです。ちなみに登記費用が高いから自分で登記をしたいという方もまれにいらっしゃるのですが、銀行ローンを組む場合だと銀行が許してくれない場合もあるので注意が必要です。
仲介手数料
不動産会社やハウスメーカーに取引の対価として支払うものです。仲介手数料の上限は以下となります。
売買価格400万円超の場合(物件価格×3%+6万円)×1.1(消費税)
仲介手数料については、数十万~数百万単位になる高額な諸費用と言えますが、土地がハウスメーカーの保有する建築条件付き土地であれば掛かりません。
反対に【取引態様:媒介】と言われる別の不動産会社が保有する土地を購入するケースでは仲介手数料が掛かります。しかし、ハウスメーカーは建物部分で利益を出しているため、仲介手数料がかかるケースでもこの部分は値引き交渉の対象になりやすいので一言言ってみるのもおすすめです。
火災保険料
住宅ローンを組むうえで必須項目となる火災保険の加入ですが、こちらはほぼ100%ハウスメーカーからの斡旋があります。火災保険については物件ごとに保険会社が審査をして保険料をだすため建物の構造により費用が変わります。省令準耐火構造など燃えづらい構造とすることで費用を安くできます。ぼったくられる心配はほぼありませんが、自分で選ぶ場合プランが多彩なので金額は個々で変動しやすいです。
銀行ローン関係の諸経費
銀行ローンを組む際に発生する諸費用です。登記費用の項目にある抵当権設定登記も銀行ローンを借りる場合に発生する費用で、お金を貸すための担保として色々な部分で諸経費が掛かります。
ローン保証料
一昔前は連帯保証人を使ってお金を借りるのが一般的でしたが、現在は銀行で借り入れをする際は保証会社に保証人の立場となってもらってお金を借りるのが一般的な流れです。説明するとかなり長くなるので割愛しますが、この保証料については借入をするあなたの属性によって金額が大幅に変わります。
保証料は借入額100万円あたりいくらという形で算出するのですが、カードローンの借入がある、年収が低いなどの理由で属性の悪い方の場合だと100万あたり45000円ほどになることも。現在の日本はあらゆる部分で平等を謳っておりますが、保証料についてはがっつりその人の仕事や年収、既存借入額などで金額が変わります。
また、銀行ローンも個人で選ぶことは可能ですが、注文住宅の場合は基本的に分割融資に対応している金融機関でないとつなぎ融資を利用する必要が出てくるので個人で正しい選択ができるかは非常に難しいところ。
会社の給与振り込みをしている金融機関や会社が提携している金融機関を使いたいという場合は一度営業担当に確認を取ってましょう。
契約印紙税
住宅ローンの申し込みをする際は契約書に印紙を貼る必要があります。契約書の枚数や借入金額によって金額が確定します。印紙税は法律で定められているものなので過剰に請求されることはありません。
融資・事務手数料
融資をする際に掛かる手数料であり、銀行によって異なりますが20000~60000円ほどの範囲になることが多いです。ただし、こちらもペアローンを組むなどして契約書の枚数が増えると2倍になることもあるので銀行ローンについては金利を含めた全体の諸費用から金額を判断することが大切です。
注文住宅はネット情報以上に高くなりがち
注文住宅はインターネット上に乱立している根拠が乏しく全く正確でない安い坪単価によって多くの人が案外安く買えるんじゃないかって思ってしまいがちですが、総費用で考える場合はそれなりの仕様や自分のやりたいことを求めるのであれば相応の費用が掛かることを認識しておきましょう。
というのも、私もハウスメーカーに勤めていたころ、ネットに記載されている自社の坪単価がいずれも実際に販売している金額よりも大幅に安く表記されていて、そうした記事をネットで見ているお客様の対応時に困ったことがありました。
極端に安く建てられると認識しているお客様がいる。これはハウスメーカーあるあるです。
話がそれてしまいましたが、ここで一つ参考となるデータを共有したいと思います。それは住宅金融支援機構が公開している所要資金という項目です。こちらは2020年度の統計ですが、注文住宅に掛かる所要資金と住宅面積の推移です。
このデータによると首都圏で注文住宅を建てた人に掛かった総費用の平均金額は3,808万円。そして首都圏で建てる注文住宅の平均床面積は123.9㎡(37.48坪)。これを割ると坪あたりいくらになるのか計算してみましょう。(123.9㎡=37.48坪 )
3808万円÷37.48坪=101万6千
もちろん、様々なハウスメーカーが含まれる平均となるので一概に言えないのですが、本体工事価格のみを坪単価とする場合と総費用を坪単価にする場合ではこれだけ費用の差が生まれるのです。本来はこの総費用を坪単価で割った金額の方が消費者にとっても単純明快でわかりやすいのですが、ハウスメーカーは安く見せてまずお客さんを呼び込みたいという思惑もあるのでこの辺を曖昧にしているのでしょうね。
今回は注文住宅における見積もりの現状と相場についてお話をしましたが、正直こちらは本当に各ハウスメーカーによって計上する項目がバラバラなので総じて話すことは難しいです。そのため、後日各ハウスメーカーごとの見積もりチェックなんかもサービスとしてはじめられたらいいなと思っております。是非一生に一度のお買い物を後悔なく進めてください。