各ハウスメーカーには営業マンに個人に値引き枠が与えられていることが多く、どのハウスメーカーでも値引き交渉は基本的にできます。
しかし、注文住宅の場合の値引き交渉はやや特殊であり、タイミングなどによって最大限の値引き幅を引き出せない方もまた多かったりします。
今回は、実際に注文住宅を建てたユーザー100人に聞く値引き額の相場や失敗談ついての話と、元ハウスメーカー営業の筆者による住宅メーカー側の値引きの性質についての話をしていこうと思います。是非今回の記事を見て失敗ない値引き交渉を行ってください。
注文住宅に値引き枠がある理由
まず、前提として多くのハウスメーカーが値引き枠を設けているのかというと、契約を決断してもらうための材料として使う理由の他にもう一つ大事な要素があります。
それは意図せぬトラブルによって発生した追加費用を値引き枠で賄うためです。
注文住宅を建てる上で当初の見積もりよりも金額が大幅に上がってしまったという話を聞いたことがあるかもしれませんが、これはオプションを追加する他に不動産調査の過程で意図せぬ費用が追加で発生してしまうことが往々にしてあるからなんです。
特に地盤改良費など契約まで話を詰めないと金額が確定できないものなんかもあり、そうした時に見積もりよりも高い費用が掛かってしまった場合に、この値引き枠から費用が充てられるケースが非常に多いわけです。
こうしたハウスメーカーの値引きの性質を知っておくことで値引きを最大限活用できる方法が見えてくるので後述にて解説します。
※一条工務店など値引き交渉ができないとされるハウスメーカーもあります。
値引き額の相場
今回記事作成にあたり、クラウドソージングサイトを使って100人を対象にアンケート調査を行ったところ、値引き額の相場はおおよそ見積もり額の2~6%のとなることが多い結果となりました。金額にすると100万円前後が多い印象です。
もちろん今回の結果は、注文住宅の価格やハウスメーカーが個々で違うため一概に言うことはできませんが、それでも値引き幅に結構な差があるとは思いませんでしょうか?
実は私が勤めていた大手HMにおいてもそうだったのですが、同じ会社だとしてもお客様によって値引き額は異なります。それは交渉のタイミングや条件等の各種すり合わせによって提示する値引き額が変わってくるためです。今回の記事では最大の値引き幅が引き出せる可能性が高い交渉術についても後述しているので参考にしてみてください。
【値引きの条件】メリット・デメリット
注文住宅の場合、基本的に安くしてくださいと言っただけで安くなることは稀です。実際に店舗に赴き話を詰める段階の値引き交渉においては下記のような条件が付くことが多いので参考にしてください。なお、内容によっては値引き額よりも大きな実損・デメリットとなる場合もあるので注意が必要です。
契約の決断と引き換えに値引き
最も多いパターンの条件です。契約を取らないことには営業にとって1円も報酬が得られないので、最後の切り札として値引き枠が残っていればここで使う営業が多い。この値引き条件については顧客にとってデメリットになることは基本的にないので建物や内容が気に入ればここで決断もありです。
完成した家を現場見学会として利用する値引き
あなたの家が完成した際に、今後モデルハウスとして利用させてもらうことで値引きに応じるというパターンもあります。これは生活後もハウスメーカーと付き合いが生まれることになるので一見メリットですが、土日祝日等に急遽内見の連絡がくることになるのでそれをよしとするかによって変わってきます。しかしながら、値引き額が大きくなる傾向にあります。
着工日の指定を条件に値引き
こちらの値引き方法は、今月契約がないなどの住宅メーカー側の都合によって提案されることの多い値引き条件です。注文住宅は契約後も打ち合わせ後に複数回打ち合わせを重ねて着工に進みますが、こちらの条件をのむと一般的には打ち合わせ回数が減る傾向にあり納得のいくプランができないまま着工に向かうリスクもあります。
相見積もりによって値引きを引き出す
複数社のハウスメーカーに見積もりを出し、値引きを交渉を行うケースです。これは実務上でも多くのお客様が行っておりましたが、タイミングによってはデメリットになりうるものです。
例えば、話を詰めていない段階で「他社はこれくらいだから・・・」という理由で値引き交渉を行っても、ハウスメーカー側からすれば建築プランや不動産調査の終わっていない段階で言われても正確な資金計画が作れていないので値引きがしづらい状態にあります。
そうなると、メーカーによっては建築資材のグレードダウンをすることによって希望の値引き額にプランを合わせようとしたり、現状の状態から変更を加えることになるので結果的に値引きをしたというよりも質を下げたという方向に進んでしまう場合があるのです。
また、営業マン目線で言わせてもらうと、お客様が信頼関係を求めるように営業マンもお客様との信頼関係を大切にします。家を建てるということは、顧客の仕事や年収、家族構成など個人情報の多くを聞き出さなくてはならないので普通の営業マンであればまずは自分を信じてもらえるようにお客様との信頼関係を築こうとするからです。
仮にそうした関係になる前に値引き交渉や相見積もりの話をされると店舗で話を複数回聞いてくれる顧客と比べて間違いなく優先度が落ちることになります。
そのような状態で値引きに応じてもらえたとしても最大限の値引きを引き出せたのか微妙なところですし、批判を恐れず言わせてもらうと、話を詰めていない段階で値引き交渉をされても「資金確定してないし、これくらいで投げておけばいいや」くらいの感覚で提示する営業マンが非常に多いのです。
値引き交渉の適切なタイミングは?
注文住宅の値引き交渉を行うに最も適切なタイミングは複数回の案内を終えてクロージングの段階で交渉をするということです。
ここまで来るとお互いにある程度の信頼関係ができている状態であると思いますし、このタイミングで話すことで営業マン側もここまで時間をかけ話を進めてきたことに対して本気の値引き提示をしてくる場合が多いです。
なんせ注文住宅は契約して初めて歩合がでるので・・・ここで0円で終わるか、歩合額を下げてでも割引に応じるかは誰が見てもわかる結果ですよね。
値引き交渉と同時に必ず伝える文言
値引き交渉は時間をかけて共にプランを進めた終盤が最も多くの値引き額を引き出せると言えます。
そして、この段階でもう一つ大切なことがあります!それは、今後発生する意図せぬ費用が起きたときにハウスメーカー側の負担としてもらえるよう、事前に釘をさしておくということ。
これがどういうことかと言うと、前述したように不動産の取引は契約後に意図しない追加で発生する費用というものがいくつかあります。例えば地盤改良費や水道引き込み工事などは土地の状況によって費用の割合が大きく変わってくるケースがあります。
この際に、提示されている資金計画書にこれらの記載がある場合は仮にこれ以上の金額が掛かることになったら費用負担は難しいということを予め伝えておきます。これを伝えておくことで万が一費用が増えた場合にハウスメーカー側が負担してくれるor折半と言った場合もでてくるためです。
また、営業マンの中には契約を取りたいがために地盤改良費などを資金計画に載せていない場合などもありますが、そうした場合にも備えて以下の質問をしておけば言質が取れるという意味で極力費用の負担を減らせると言えるでしょう。
実際に過去、値引き交渉と同時にこうした話を事前にされたことによって、値引きを勝ち取りつつ契約後に発覚した擁壁の撤去費用(300万)を全額ハウスメーカー持ちすることがありましたので営業マンにしつこいと思われるくらいお金の話は確認することが大切と言えます。